天竜の木をみんなで届ける。JAPAN WOOD PROJECTの未来につなぐ想いのバトン。

DATE : 2024.02.20
目次
サプライチェーンでつながる様々な事業者が参加するJAPAN WOOD PROJECTの未来にはどんな展望があるのだろうか。また、参加する人々の想いはどのようなものなのだろうか。本記事から、「天竜」の木材を取り巻く人々の思いをインタビューを通してリレー形式で紹介していく。JAPAN WOOD PROJECTインタビューリレー第一弾では、静岡県森林組合連合会の浦田さんにお話を伺った。彼らの想いは一体どんなものなのか、詳しくお伝えする。様々な立場の参加者たちの想いを垣間見ることによって、JAPAN WOOD PROJECTの未来像が見えてくるかもしれない。

※JAPAN WOOD PROJECTについて詳しくはこちら
この記事のPOINT
  • JAPAN WOOD PROJECTが叶える「誰も損しない商売」
  • 見込み生産から計画生産へ
  • 今まで聴けることのなかった「お客様の声」が山へ戻っていく
  • JAPAN WOOD PROJECTの活動を広げたい。地域と林業の輝く未来のために
この記事に登場する人
浦田 卓秀
静岡県森林組合連合会 天竜事業所所長
JAPAN WOOD PROJECTを構築するサプライチェーンの中で、林家さんから木を集めて販売する原木市場で仕事をしている。
”JAPAN WOOD PROJECT”
それは、「繋がり」。人々が木のぬくもりを感じ、木の恩恵をまた山へ返す。みんなでつくる循環の物語。

木材がお客様に届くまでには、林家、丸太市場、製材所、販売店、加工業者、住宅会社というサプライチェーンが存在します。しかし、従来の形は、そこに資材の流れが存在しているだけ。

川上である「山側」の願いは川下である「建築会社」に伝わることはなく、逆に川下である「建築会社」の想いが川上の「山側」へ届くことはありませんでした。

そこで、JAPAN WOOD PROJECTでは一方通行だったこの木材産業サプライチェーンの構造を複方向になるよう統括しました。

「従来型サプライチェーン」の図
「従来型サプライチェーン」の図
それぞれの事業者が持っていた課題をみんなで解決し、想いを理解し合うことで、どんな道を築き、どんな未来へつながっているのか。

JAPAN WOOD PROJECTに関わる事業者の声を聞きにいく、J W P リレーインタビューシリーズ第一弾。
今回は、森林組合の浦田さんにお話を伺った。
JAPAN WOOD PROJECTの構図と森林組合の関係

森林組合として感じていた課題と新たなサプライチェーンの形

森林組合ってそもそも何をしているところ?

取材班
まずはじめに、森林組合について教えていただけますか?

浦田
森林組合とは、森林所有者たちが作業の問題を協力して解決するために設立された組織です。森林所有者は木材を切ったり作業をする際に困難が生じることがあります。そのような時に、森林組合が手助けをしています。

取材班
具体的には、どんなお仕事をされているのでしょうか?

浦田
木の伐採や輸送、苗木の取り扱いなどの活動を行っています。また、県の森林組合は、市町村の森林組合が対応しきれない事柄を行います。例えば、木材の販売や、そういった業務のまとめ役としても機能します。また、国や行政との交渉にも取り組んでいます。

JAPAN WOOD PROJECT × 森林組合

取材班
最初にJAPAN WOOD PROJECTの話を聞いた時、どんな感想をお持ちでしたか?

浦田
難しいと思う反面、面白い取り組みだなと思いました。今まで関わる事業者全員が集まって話し合うという機会もなかったですし、実際に皆さんの生の声を聞いて様々な気付きがありました。

取材班
このプロジェクトが立ち上がる以前の課題はどういったところにあったのでしょうか?

浦田
情報共有ができていなかったことですね。

取材班
情報共有ができていないとどんなことが起きるのですか?

浦田
ひとつ例を挙げると、生産している材と欲しい材のミスマッチが起こります。

取材班
たとえば...??

浦田
「大径木(太い木)は需要が少なく買い手がつかないものだ」と諦めている林家さん・材木市場側と、「そんな立派な素材があるなら構造躯体としてそのまま使いたい!」というアイジーさんの考えは、今回のプロジェクトが始まるまでは交わることがありませんでした。

取材班
今までは森林所有者さんとの関係性だったり、製材業者さんとのやりとりのみだったということですよね。

浦田
そうですね。100本の丸太の受注が入ったら100本を用意して製材業者さんに売って終わりでした。

取材班
JAPAN WOOD PROJECTで情報や想いの共有ができるようになったことで、サプライチェーンの中での分断が改善されたということですね。

浦田
その通りです。森林が抱える問題は、林家さんだけで悩んでいても解決できません。流れ作業のサプライチェーンではダメなんです。

取材班
関わる全ての方との繋がりが今後の木材産業には欠かせないですね。

浦田
そう思います。生産者、加工業者、販売業者、建築会社など関わる全ての業者間で、抱える課題を共有して、その先の未来像に共感して協力することがとても重要だと感じています。

JAPAN WOOD PROJECTの強みと恩恵

「繋がり」が生まれ、もたらされた変化

取材班
活動を始めて5年ほど経ったと思うんですけど、パートナー企業さんとの関係性だったり、自分自身の仕事で、変化はありましたか?

浦田
個人的にも、この天竜の事業所としても、売って終わりじゃないよっていうところを強く意識するようになったと思います。

取材班
売った先のことを意識するようになったということですか?

浦田
その通りです。関係事業者やその先のお客様のことを知ることで想像できるようになりました。先ほどの100本の受注の話で言うと、その100本が売れた先でどう使われていくか?といった、もう少し入り込んだ扱い方をするようになりました。

「見込み生産」から無駄のない「計画生産」へ

取材班
JAPAN WOOD PROJECT の取り組みの中でも、森林組合として特にメリットになっている部分を教えてください。

浦田
使用する木材を規格化して、約半年先までの発注計画を共有していただけるようになったことですね。

取材班
計画的に生産できるようになったことは、森林組合にとってどんな意味を持つのでしょうか?

浦田
見通しを立てて生産できるので、全部がこうなれば無駄に木を切ることも、丸太を余らせることもなくなるということです。

取材班
伐採計画や生産管理の改善につながるということですね。

浦田
また、どんなものに使う材なのかを把握しているので、その用途にあったものを目利きすることができます。

取材班
わたしたち家を造る身としても、より用途に合った木材を選んでいただけることで、お客様にもっと喜んでいただけると思っています。

浦田
まさに「三方よし」ですよね。お客様の声が山側に返ってきてそれに応えたいと思って、また循環していくという形に非常に魅力を感じています。

今後の森林組合とJAPAN WOOD PROJECT

今後の森林組合の展望

取材班
森林組合さんの使命を教えていただけますか?

浦田
私たち森林組合の本来の目的は、森林所有者の社会的、経済的な地位を向上させることです。以前は求められた丸太を売るだけでしたが、今後はそこにとどまっている必要はないなと感じています。

取材班
どのような挑戦を考えているのでしょうか?

浦田
極端な例ですが、我々が製材工場を持ったり、製材品を販売したり、枠にとらわれず、天竜の木材がもっと地元の方に使っていただける材になるように挑戦していきたいと思っています。また、地元だけでなく全国の方にも魅力を知っていただきたいですね。

取材班
そのためにもJAPAN WOOD PROJECTでやっていきたいと考えていることを教えてください。

浦田
言葉にするのが非常に難しいところなんですけどね。みんなでチームとして取り組むことによって、多方面から情報を取れるようにしていきたいなと思ってるんですよ。

取材班
今以上にチームとしての運営を強化していきたいというところですかね。

浦田
チームとして深くなっていきたいですね。例えば、森林組合が話を受けて、こういう話があるんですけどどうですか?と他事業者さんに繋げたりというのもどんどんやっていきたいです。

取材班
想いをお聞かせいただき、ありがとうございました。今後もとも、天竜から木材産業の活性化を目指していきましょう!

JAPAN WOOD PROJECTは、サプライチェーンでつながる様々な事業者が参加し、地元での木材産業の活性化を目指している。本記事は想いでバトンを繋いでいくインタビューリレー記事第一弾。今回は森林組合浦田さんにインタビューを行った。JAPAN WOOD PROJECTでの、さらなるサプライチェーンの強化を目指すという言葉。森林組合は、森林所有者の地位向上だけでなく「更なる」取り組みを進めるため、JAPAN WOOD PROJECTを最大限活用していただきたい。 第二弾の記事もお楽しみに。

関連記事▶JAPAN WOOD PROJECT 定例会レポート Vol.1|未来の林業体制を見据えて
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