日本の林業を変えるトップランナーになる|アイジーグループアワード特集
- 建材として使用されていなかった、飛騨材の現状。
- 価値あるリブ材に生まれ変わり、木を切る喜びを感じる。
- 全国にJWPを広げたい。
JAPAN WOOD PROJECT飛騨について
国産材を有効活用し、地域の林業を支え、国産材の価値を高めるJAPAN WOOD PROJECT。当プロジェクトの第二段としてJAPAN WOOD PROJECT飛騨(以下、JWP飛騨)がスタートしました。 天竜材は針葉樹の大径木を主材としていましたが、JWP飛騨で扱うのは岐阜県飛騨地方で採れる『広葉樹の小径木』。直径26cm 以下の小径木を建材として活用することで、価値を生産者へ還元。計画的な植樹・伐採の循環が生まれ、地域の雇用創出や森の土壌を綺麗にする効果も狙っています。 飛騨市地域おこし協力隊 広葉樹活用コンシェルジュの及川様と連携を取りながら、飛騨の森林が抱える状況を把握し、具体的な活用方法の検討を進めていきました。取材班 JWP天竜とJWP飛騨の違いについて教えてください。
内田さん まず、扱う材料が違います。JWP天竜は針葉樹の大径木、JWP飛騨は広葉樹の小径木を対象としています。広葉樹は針葉樹よりも固いので、一般的には家具材として使用されています。
飛騨へ視察にも行き現地の状況を伺いました。飛騨市の森林率は94%、そのうち68%を広葉樹が占めています。
内田さん それほど多く生産されている広葉樹ですが、実際にとれるのは26cm未満の小径木が多く、家具材としても使いづらいため、価値の低いチップに加工されていました。これを建材として余すことなく使えれば飛騨の林業も潤うと考え、活用方法を見出すことがプロジェクトの始まりでした。
取材班 そもそもが建材として使われていない材だったのですね。
内田さん そうですね。
建材にも色々あるので、何にしようか考えるところから始めました。当初はフローリング材に出来ないかと検証もしましたが、コストが見合わなくて・・・。飛騨材の価値を高めつつ、お客様にもデザイン・コストの両面から良いと思ってもらえるものを検討した結果、リブ材という仕上げ材に行き着きました。
商品化に向けて
内田さん アイジースタイルハウスの長久手展示場にリブ材が使われているのですが、すごく綺麗なんですよね。リブ材は高価なもので商品の種類も少なく、針葉樹のリブ材はあっても国産の広葉樹を使ったリブ材は無いんです。飛騨の広葉樹でリブ材を作れば、他にはないオリジナルの商品になりますし、もしかしたらコストメリットも出せるかもしれない。しかもリノベーションの現場でも使える。より多くの飛騨材の活用が見込めると分かり、商品開発を進めていきました。
取材班 針葉樹のリブ材と広葉樹のリブ材は、どのように違うのでしょうか?
井上さん 針葉樹だと白木っぽいものが多いのですが、広葉樹は既に色づいたものが多く、針葉樹を塗装するのとはまた違った色合いの表現ができます。模様もまばらに混在しているので、空間のアクセントとして使用しやすいのが特徴かなと思います。
使用用途が決まった後は、具体的なサイズや加工・製材スケジュールなどを協議していきました。実際に使える現場を探し、マンションリノベーションの現場で使ってもらうことになりました。
取材班 実際に使ってみて、皆さんの反応はいかがでしたか?
内田さん まず、飛騨と弊社を繋いでくださった広葉樹コンサルタントの及川さんにご連絡したところ、大変喜んでいただけました。もっと写真が見たいという追加のご要望もいただきました!
井上さん 施工面では課題も出ました。例えば、リブ材同士をつなぐ部分の隙間が少し大きかったり、漆喰との取り合いの部分を綺麗に見せるために見切り材が必要だということに気付けたり・・・使ってみたからこそ分かることが沢山ありあました。これらの課題を解決して、どんどん他の現場でも使っていきたいです。
内田さん こうやって実際の商品が出来たことも良かったのですが、一番の変化は働く人の気持ちが変わった点ではないかと思います。木を切る人たちにインタビューをした時に、使えない木を切ることに対してやりがいを見いだせないと仰っていたんです。今は何のために・誰のために使う木なのかを理解した上で木を切ることができる。しかも価値ある商品になり、お金が還ってくる。今まで以上のやりがいを感じられるようになったと仰っていて、このプロジェクトは人々の働きがいまでも創出する取り組みなんだなと感じました。それが嬉しかったです。
アワード選出、そしてプロジェクトの今後について
取材班 JWP飛騨をアワードにエントリーし、全15プロジェクトの中から5つに選ばれましたね。率直な感想を教えてください!
井上さん 選ばれたいっていう気持ちでやっていたので、嬉しかったです。メンバー全員が適材適所で動いてくれて形になったので、それを評価していただけたのも良かったです。
取材班 社員総会でのプレゼンにおいては、井上さんの熱い思いが伝わり心に響きました。
井上さん プレゼンなら話の上手なメンバーの方が良いかなと思ったのですが、このプロジェクトに対しての想いや情熱を伝えたかったので、リーダーである自分が前に出て話そうということになりました。
取材班 特に伝えたかったのはどんなことですか?
井上さん 広葉樹の小径木は建材として表に出ることなく、チップとして使われているという非常にもったいないこの状況を、JPW飛騨なら解決できる。しかも飛騨の林業に携わる方々の働きがいにも繋がる。このプロジェクトを通して地域に貢献し、社会課題を解決しているということを知って欲しかったです。
アワードの発表の場で「リブ材が完成し、実際に現場で使いました」というご報告が出来れば良かったのですが、そこまでは間に合わずでした・・・。ただ、この半年間で実際の現場で使うところまで進捗できたので、アワードが終わった後もちゃんと進んでいることが分かるのではないかと思います。
取材班 プロジェクトの今後について教えてください。リブ材以外の使用用途も考えていますか?
内田さん フラッシュドアとして使えないかどうか、現在協議中です。森林組合の方からも広葉樹を使った扉を作ってみたいというお話をいただいていて、実現に向けて動いています。あとは木製格子材としての活用も同様に検討中です。
井上さん 広葉樹は固いので薄くスライスすると割れてしまうなど、加工面の難しさが課題として残っています。これらをクリアして、使用用途を増やし、飛騨材の活用をより活性化させていきたいです。
内田さん あとはグッドデザイン賞・ウッドデザイン賞の2つの賞にも応募します。現在その応募用紙をまとめているところです。賞を獲りに行くことで、JWPの価値が更に高まれば良いなと思っていますし、このプロジェクトが広く知れ渡ることを期待しています。僕たちの考えに賛同してくださる企業様が増え、他の地域でも同じような取り組みが広がっていくことが、このプロジェクトの目的でもあります。
井上さん 僕たちが日本の林業を変えるトップランナーになりたいです。先頭を走ってJWPを進め、広めていくことで、毎年全国各地でそれぞれのJWPを増やしていけると良いですね。
価値ある材料を価値ある商品に変え、林業に携わる人たちの働きがいを創出し、ひいては森林の循環の活性化にも繋がる。プロジェクトに関わる人たち全員を幸せにし、地球規模で課題解決を担う素晴らしいプロジェクトであった。アワードの発表以降も活動は続き、次に狙うのはグッドデザイン賞・ウッドデザイン賞の受賞。JAPAN WOOD PROJECTを全国に広めるために、先頭を走り続ける熱きトップランナーたちの活躍をご期待ください。