一度目の創造を、アワードで。第二回目アワードを、役員はどう見る?
- アワード発起のきっかけは新規事業プロジェクト
- 理念の浸透と、取り組みの横展開、そして創造する文化づくりに役立てたい
- 縁の下の力持ちがフューチャーされる機会に
- アワードで「一度目の創造」をしよう
代表取締役社長
専務取締役
アワード開催の目的は?
取材班 アワードの発起人である井上専務に質問です。アワードを実施する目的や狙いについて教えてください。
井上専務 アワードの目的は『企業の成長につながる取り組み、更なる成長につながる可能性を見つけ出す』です。我々アイジーグループが進化・成長し続けるために、アワードを通じて挑戦・創造の文化を育んでいきたいという狙いがあります。
今までも新規事業プロジェクトやワークアウトといった形で、新たな事業や取り組みを生み出す活動がありまして・・・私自身がそういった活動に参加する中で、ワクワクしたり「やってやろう!」という気運が高まるのを感じていました。これをアイジーグループ全体に派生して、皆さんの気持ちを高めたいなと思ったのが、アワードを始めたきっかけであり、原点なんです。
取材班 井上専務自身が、新規事業のプロジェクトやワークアウトに参加する中で感じたことだったんですね。
前回に比べて、エントリーされているプロジェクトの質が高まってきたり、前回はエントリーしなかったプロジェクトが今回応募しているのを見ると、アワードをきっかけにした気運の高まりを感じました。狙いに近づいてきていると思うのですが、いかがですか?
井上専務 そうですね、同感です。
第一回目の運営を考えた時に、何でもありとは言いつつもレベル感の低い(企業の成長への繋がりが見えづらい)取り組みばかり出てきても良くないから、ある程度基準を設けた方が良いのでは?といった話もありました。まずは一回目なのであまり制限を設けずにやってみたのですが、一回目で最優秀賞を受賞したプロジェクトのレベルが高く、成果に貢献しており社員・役員共に大好評でして。企業の成長に繋がる取り組みとはどういうものなのか、明確なイメージが持てた一回目だったと思います。そこで「自分たちの取り組みはそこまでのレベルではないから・・・」と怯むのではなく、「次こそは受賞しよう!」というモチベーションの高まりに繋がったのも良かったです。
第二回目アワードの総評
取材班 第二回目のアワードの総評と、前回と比べての感想を教えてください。
井上専務 内容としては非常にレベルの高いものになったと思っております。5つの評価項目を設けていますが(ワクワク度合い、アイジーグループの未来が見えること、成果が出ていること、メンバーが意欲的であること、ユニークで創造的であること)特に今回は成果に繋がる・成果が見える取り組みが多かったと感じています。ただ、成果ばかりに注目が集まるのではなく、ワクワク度合いやメンバーの意欲、そしてユニークな発想をしているか?という点においても評価が高い取り組みが集まってくると、チャレンジすることがもっと楽しいと思える風土になっていくのではないか、と思いました。
瀧澤社長 質は間違いなく高まってきていると実感しております。
実はアワードに関しては随分と長い歴史がありまして・・・10年以上前に「リクルート社で取り組んでいるアワード」について知り、これは良い取り組みだということで建築事業部アイジースタイルハウスでやってみることにしたんです。アイジースタイルハウスのアワードを見てみると、想像以上によい取り組みでしたので、法人事業部で採用し、その後メンテナンス事業部全体に波及していきました。なので井上専務から「アイジーグループ全体でアワードをやりたい」と話をもらった時にも賛成でした。そういった歴史を体験している身なので、”前回と比較”ではなく”10年以上前と比較”して見た時に、アワード自体が『アイジーを形成する一つの文化』になってきたと感じています。風土から文化にするには時間がかかりますが、アワードが定着した今、やっと文化になったなあと思いました。
取材班 確かに、他事業部でアワードが行われているということすら詳しく知らないままだったので、アイジーグループ全体に広がったことで、これもアイジーらしさ・アイジーの文化なんだと捉えられるようになりました。
瀧澤社長 そもそも何故アワードを取り入れたのかと言うと、一つは『理念の浸透』が目的なんです。企業理念から反れていないか?理念を元に作られた”方針”に沿った内容になっているか?という点を評価することで、アワードを介して理念を浸透させていきたいと考えました。
もう一つの目的は『横展開』です。良いなと思える取り組みがあったとして、それを自分だけ・自部門だけの成果に留めてしまうことは、企業の成長を止めることにも繋がります。だからアワードで様々な取り組みを公表し、評価されることが大事なんです。昔のアイジーには少なからず「成績のいい人を評価する」という考え方があり、新たにチャレンジすること・それを会社全体に広げていくこと自体にスポットライトが当たりにくい時代がありました。私自身、その状態に違和感があったからこそ、アワードを取り入れました。
取材班 今回ノミネートされた5つのプロジェクトは、それぞれ理念や方針に沿った取り組みになっていて、アワードの目的に適う内容であったと感じます。続いて、それぞれのプロジェクトについての感想をお聞かせください!
井上専務 まずJWP飛騨は、JAPAN WOOD PROJECT第一弾で進めていた天竜でのプロジェクトが元になっていて、エリアや人の輪がどんどん広がっていく経過を見れるのでワクワクしています。特に発表者である井上さんの熱意が伝わってきまして、来年~再来年には更に発展していくんだろうな、という期待感が持てる発表でした。
瀧澤社長 プロジェクト名称に「JAPAN」とついているので、天竜だけで終わらせちゃいけないんですよね。そういった意味ではJWP飛騨という二歩目が出たことに関して、大きな評価に値すると思います。
井上専務 オーナーズパークプロジェクトは、成果が明確であった点を評価しています。私が掲げたアワードの目的である『企業の成長につながる取り組み、更なる成長につながる可能性を見つけ出す』にも合致していて、投票するならオーナーズパークだろうと思えました。
瀧澤社長 ちょうど一年くらい前に、建築事業部の責任者の林さんが「CX(顧客体験価値)に目を向け、アイジーのファンを増やしていくことで将来的な紹介活動などに繋げていきたい」という話をしていたんです。先ほども言ったように理念や方針を実現する取り組みになっているか?という点を大事にしているので、オーナーズパークプロジェクトはまさに方針に則った素晴らしい取り組みであると感じます。
井上専務 設計チームに関しては、設計力を数字や企業の成果に繋げること自体が非常に難しいと思うのですが、その難解をクリアしている点が素晴らしいと思いました。
瀧澤社長 誰もが高いレベルでの設計提案が出来るということ自体が、企業にとっての価値であり、差別化に繋がると感じます。その価値が一時的なものにならないよう仕組み化するところまで落とし込めているのが素晴らしいです。これも建築事業部の方針に則った取り組みであり、評価ポイントの一つです。
井上専務 今回アイジースタイルハウスから出たこれらのプロジェクトは全て、成果にどう影響したのか、この先どこを目指していくのかが明確に示されており、レベルの高い取り組みであったと感じます。
取材班 私はオーナーズパークプロジェクトに所属していてアワードの資料作りも行ったのですが、資料にまとめる過程で「こんなにたくさんの成果が出ていたんだ」と気付くきっかけになりました。成果が出ていると知れたことでモチベーションアップにも繋がったと感じます。
井上専務 確かに、自分たちの活動を振り返る場としても丁度良いかもしれませんね。
Yappliチームは発表自体がユニークであったとは思いますが(笑)それ以上にメンバーのワクワク感や楽しそうな様子が伝わってくるプロジェクトだと思いました。若手メンバーが感じた現場の課題を解決するために社内アプリを作る、という発想そのものがユニークかつ創造的であると感じます。まだプロジェクトというものに参加していない若手社員にも、輝かしい存在に見えるのではないでしょうか。
瀧澤社長 若いメンバーが本当に頑張ってくれていますね。社内アプリを作るに至った課題の感じ方や、解決策の発想そのものが新しい感性だなと思いました。
井上専務 個人的には、R&Dプロジェクトが内容も発表も非常に良かったです。シロアリで昆虫食の未来を考えるという発想が面白いですし、社員のコメントからもインパクトの大きさを感じました。活動内容が目立っているとは言えないプロジェクトだったので、知らない社員も多かったのではないでしょうか。アワードを通して全社員に知っていただくことが出来て良かったと思います。
瀧澤社長 会社として何かに投資するとなった際に、集客活動やビジネスモデルに投資をするのではなくて、こういった研究開発に投資していけるようになりたいと考えています。日本で一番古いシロアリ会社だからこそ成せることですよね。まだ発展途上ですが、アイジーの企業価値を高めていくプロジェクトになることを期待しています。
「創造する文化」がなぜ必要なのか?
取材班 瀧澤社長の方針に、アイジーの価値観として「インキュベーショングラウンド(創造しよう)」を大事にしていきたいというお話や、重点課題の一つに「新規事業の立ち上げ」がありますよね。これらが大事であることは漠然と理解しているのですが、なぜ今のアイジーにとって必要なのか、改めてお話しいただきたいです。
瀧澤社長 まず、インキュベーショングラウンドの捉え方から説明しますね。インキュベーション=孵化するという意味で、以前のアイジーは新規事業をつくる=インキュベーショングラウンドという定義になっていました。ですが、新たに孵化するものって事業だけではないと思うんです。新たな価値であったりとか、新たなサービス、新たな働き方かもしれない。生み出すものっていっぱいあると思うんです。事業に囚われず、様々な尺度で創造していくことが、私の目指すインキュベーショングラウンドです。よく「すべてのものは2度つくられる」と言いますが、まずは頭の中で創造することが大切です。『創造』という言葉は2回”つくる”って書きますよね。まさにそういった企業でありたいなと思ったので、”インキュベーショングラウンドは創造すること”だと定義づけました。
今まで培ってきた歴史感の中で新たな事業をつくるのは、ハードルが高いことであると理解しています。そこにチャレンジする人材が生まれることをとても楽しみにしてはいますが、社員全員が新たな事業にチャレンジする=いい企業とは思わないんです。ちょっとした創造、ちょっとした改善もインキュベーショングラウンドであると思っていますし、小さな工夫改善が企業を大きく成長させるきっかけにもなります。社員一人一人が『創造』に意識を向け日々の仕事に励んで欲しいと思い、「インキュベーショングラウンド」をアイジーの大事な価値観の一つにしました。
井上専務 2019年にブランドスローガンである「for LONG」を策定した際に、アイジーの過去を振り返ったんです。ここ20年くらいでアイジーは大きく変わったんですけど、そのプロセスには数多くのチャレンジがあったと感じています。当時のチャレンジのおかげで今のアイジーの成長がある。そう思うと、新たなことにチャレンジし、創造していくことは、今後のアイジーを創る上でとても重要なことだと考えています。
取材班 今回のアワードに選出されたプロジェクトのように、企業の成長に繋がる大小様々な取り組みが進行している状態こそが大事であるということですね。
瀧澤社長 その中で結果的に新規事業が生まれれば良いなと考えています。事業というのは人と同じで、2本で支える逆立ちよりも3本で支える三点倒立の方が安定します。今ある「住宅メンテナンス」「建築不動産」とは別の新たな事業、3本目の柱を生み出していきたいです。どんどん失敗してもいいし、寧ろうまくいくことの方が少ないわけですから、失敗を恐れずチャレンジする文化をつくっていきたいなと思います。
取材班 個々のプロジェクトから新規事業が生まれたり、何をやるかは決まっていないけど「新規事業をやりたい!」という熱意ある社員が出てくるようなアイジーにしていきたいですね。
瀧澤社長 私自身も10年ほど前に新規事業を提案したことがあって、どうしてもやりたかったんだけどその時は実現できなかったんですね。ただその時に、当時の監査役の方から「あなたみたいな人が会社を変えていくんだよ」と言ってもらえたことが自信になりました。その事業の実現には足りないけど、お金を投資するに値する内容だったと言われて嬉しかったです。時代が変わっても、熱意のある社員が会社を変えることは変わらないと思っています。
今後のアワードに期待すること
取材班 次回以降のアワードに向けて、プロジェクトに取り組んでいる社員へ期待することや、アワードの次なる発展性について考えておられることがあれば教えてください。
井上専務 インパクトの強い取り組みばかりではなく、日々の小さな業務改善やブラッシュアップを続けているプロジェクトもたくさんあります。特に本社では社員の働きやすさに関連した取り組みもたくさん行われていますが、そういったプロジェクトはなかなかフューチャーされにくい実情があります。縁の下の力持ち的な立ち位置で企業を支えてくれていることは間違いないので、そういった取り組みも分け隔てなく評価できるような形にしていきたいです。
瀧澤社長 井上専務が言う通り、今は各事業部の中で行われる取り組みが多いですが、本社もチームの一員として全社員で取り組めるものになると良いなと思います。結果的に新規事業が生まれたら良いし、アワードの発展形が新規事業コンテストみたいなところまで広がっていけると面白いですね。
まずは、創造する文化をつくることが大事。日々の仕事時間の中で一度目の創造をする時間はなかなか生まれにくいと思うので、アワードを活用して創造する機会をつくってほしいです。
アワードの取り組みそのものは、10年以上前から各事業部の中で行われてきた。しかし事業部内で完結してしまっており、どんなメンバーが何に取り組んでいるのかもわからないままであった。アワードはそれらを公にすることで、事業部の垣根を超えた展開を生んだ。更に、年齢や職種に関係なく意気揚々と取り組む社員に触れ、「自分も頑張りたい」「自分にもできるかもしれない」という気運を高めるきっかけにもなった。まだ2回の開催であるが、創造する文化の一助になっていることは間違いないと感じる。アワードは来年も開催を予定しているため、次はどんなプロジェクトがピックアップされるのか楽しみにしていていただきたい。