有事の際でも「for LONG」。社員も会社も地域も守るためにできることとは。

DATE : 2022.06.12
目次
日本は地震・台風といった自然災害が非常に多い国です。近年では毎年のように日本のいずれかの地域で大規模な水害も発生している。また、新型コロナウイルス感染症によるロックダウンや世界各地の地域紛争やテロなど、企業経営にも影響する様々なリスクが年を追うごとに高まっている状況だ。 企業として、有事の際にどのように対応していくのか。社員を守り事業を継続するためには何が必要なのか。アイジーコンサルティングで実施しているBCP対策について話を聞いた。
この記事のPOINT
  • 防災対策・自助・共助は当たり前。もともと社内に根付いていた風土を体系化。
  • 社員の自発的な行動・発信でより強固な対策・体制へと進化し続ける。
  • 有事の際でも「for LONG」。社員も会社も地域も守れるように。
この記事に登場する人
森下真彦
株式会社アイジーコンサルティング
総務課 課長
アイジー入社後、メンテナンス事業や耐震事業に携わる。2007年より総務の責任者として、社内のバックヤードを管理。

アイジーコンサルティングのBCP対策のはじまりとは?

「分かっている」と「できる」は違う。 防災対策は当たり前。もともと社内に根付いていた風土を体系化。
取材班

近年、毎年のように日本各地で発生している自然災害。世間的にも「BCP対策」という言葉が一般化してきたように思います。アイジーコンサルティングでも企業として「BCP対策」に取り組んでいると思います。いつ頃から実施しているのですか?

森下

BCPという言葉の下に体制整備を本格的に始めたのは一昨年からです。
それまでは、従業員の安否確認、避難場所の確認、緊急連絡整備等、年に1度の単発で形式的な取り組みがほとんどでした。まだまだ充分ではありませんが、安全対策室を中心にBCP(事業継続計画)を意識した体系化した取り組みがスタートしたばかりです。

取材班

BCPを体系化して本腰を入れようと思ったきっかけはあったのですか?

森下

きっかけは、提案.curu(社内 提案改善委員会。社員から届く提案を協議し、経営層に対し、日ごろの業務改善から福利厚生の制度まで、直接提言できる仕組み)に届いた1つの提案、「社員の声」からでした。当社はもともと耐震事業を行っていたり、災害ボランティア派遣を行っていたりと全社的に防災意識は高かったと思います。BCPという言葉を使わずとも「対策は重要」「やらなくては」という意識があり、防災・災害対策は当たり前という風土はありました。
防災訓練、防災備品の整備などは定期的に行っていましたが、根付いていたからこそ現場任せで組織としての体系整理が弱かったです。「分かっている」と「できる」は違う。いざとなったら社員を守ることはできるのか。動くことはできるのか。「社員の安否を気遣う」基本的な対策・訓練はしていましたが、BCP「事業継続計画」という視点は弱かったので、そこを強化していこうとなりました。そこで、まずは防災・災害対策の観点でのBCPの体系化から着手を始めました。

対策を推進する中で起こった社内の変化とは?

きっかけは企業としての災害対策の観点でのBCPの体系化。 社員の自発的な行動・発信でより強固な対策・体制へと進化し続ける。
取材班

企業として具体的に取り組んでいる対策にはどんなものがありますか。

森下

災害発生時の初動対応マニュアル(有事の際の指示)、備蓄品の管理・確認などの体系化を行っています。主要な取り組みとしては「安否コールによる速やかな安全確認と全体掌握」、「ハザードマップによる自宅、会社、通勤経路の危険箇所の把握」、「停電時に備えた発電機の操作方法」の3つです。

安否コール(災害時安否確認システム)
安否コールを導入し、有事の際に社員の安否確認・ GPSによる所在場所の共有ができる体制をとっています。定期的に安否コールを活用しての防災訓練も行っています。またこの安否コールは社員の家族も登録ができ、社員の家族内でも活用できるようになっています。

ハザードマップの確認
年1回、避難訓練を実施していますが、その際にハザードマップを使って自宅、事務所、通勤経路周辺の危険個所の把握、確認をしています。東日本大震災以降、災害といえば「地震・津波」に意識が行きがちでしたが、近年、各地で水害が多く発生しており、水害は我々の身にふりかかる可能性の高い災害となっています。ハザードマップの確認は、日頃気にすることのない近づいてはいけない危険箇所や安全場所の把握など、防災の意識を高めるうえで活躍しています。

発電機の各店配置
以前、台風による数日間の停電を受け、日常生活はもちろん、業務遂行において電力への依存度が高く、電気がないことでメールなどビジネスツールが全く使用できない無力さを実感しました。各店に発電機を配置して、業務の機能不全に陥らないように最低限の電力確保できるようにしました。宝の持ち腐れにならないように、操作方法の共有&定期的な作動チェックを実施しています。

安否コール アプリは全社員のスマホに設定
各店の防災グッズは定期的にチェック
初動マニュアルを社内で共有
取材班

災害に対するBCPを本格化し、社内の変化はありましたか?

森下

はじめは社内でも総務から配信されたことを行う、「やらされ感」があったと思います。
しかし、いろいろな災害が世の中で発生し、社員自身がより身近に防災・災害対策の重要性を感じ、皆が積極的に取り組むようになりましたね。
またアフターサービス(施工部門)の社員が発電機の操作方法マニュアルを自主的に作成し、全社に広報するなど、自分・自店舗だけでなく全社に対して働きかけをしてくれています。BCP対策をするというよりも、社員皆が主体的に「自分たちの身を自分で守る」、「地域の人を守る」といった意識を持って行動しています。もともと社風として防災意識は高かったのでBCP防災対策が社内で根付くのは早かったですね。

また提案.curuにも「避難訓練を充実させよう」、「社内で防災の日を設定する」、「火事に対する対策の強化」など、社員自らBCPに関する提案があがってきますね。総務からの発信は、きっかけに過ぎず、現場で社員たちが自ら考えて進めてくれています。こちらから働きかけなくても社員の声でいろいろと活動が拡がっています。

企業として、今後力をいれていきたいこととは?

BCPという言葉で片づけない。大切なのは取り組みを継続していくこと。 そして、社員も企業も地域も「for LONG」であり続ける。
取材班

企業として、強化していきたいことはどんなことですか。

森下

3つあります。
1つ目は対策を「継続する」ことです。
防災・災害対策は、ここ2・3年で整ってきました。しかし、避難訓練も年1回しか実施できていないので、もう少しコンスタントに防災意識を高める施策を行っていきたいと考えています。BCPという言葉で片づけると陳腐な感じがしてしまいます。一番よくないことは一時的な盛り上がりで終わることです。常日頃の訓練が重要です。これは継続的に行っていきます。

2つ目は共助、地域との関わりです。
また、自社単体ではなくて、地域の防災訓練へも積極参加していきたいです。弊社営業所は東は千葉県から西は岐阜県まで広範囲にわたります。大企業だと1か所に集まっての訓練ができますが、弊社は営業所が各県に点在しているので合同開催は難しい半面、その店舗の所在する地域に根付いた活動もしやすいです。各営業所ごとで地域の活動に参加していきたいですね。

実際に私自身、地域の防災訓練に毎年参加しているのですが、いろいろと気づきや学びがあるんですよ。地域の防災訓練では定番の 火災発生時のバケツリレー訓練など、「練習しなくても」と思われがちですが、やってみると複数人で協力することの重要さを実感します。1人では本当に非力なんですよね。一度訓練を経験しているかどうかで、有事の際に迅速な行動がとれるかどうかが変わります。災害時は1分1秒、時間との戦いですから。
災害時は、最終的には「助け合う」しかありません。自社だけでは、何とかしようと思っても、できないことがあります。日頃から地域と関わっていくことで、有事の際も機敏に対応ができる人・企業でありたいですね。

取材班

自助・共助ですね。いざ災害が発生したらどうすればよいのか。地域との関わりも大切ですね。最後3つ目もお聞かせください。

森下

最後3つ目は「事業活動の継続」です。
防災・災害対策は整ってきたので、次は本当の意味でのBCP「事業継続活動」に対する対策を本格化していきたいです。人的な整備はできてきました。本当の仕事的な物資・材料の手配など、まだ未整備な部分が多々あります。

弊社は営業エリアが広いため、有事の際でも一極集中することなく、各エリアごとに災害対策本部を設置し対応する体制は整えています。現在もシロアリ防除薬剤等の材料を多めに備蓄する等、必要最低限の備えは実施しています。

例えば東京で被害が発生し、愛知・静岡では正常稼働ができるとき、供給体制に影響はは出ないか。もしかしたら自社だけではなく他社との協力体制も必要となるかもしれません。緊急時に供給がストップしないように、現場が稼働できるように、自社だけではなく協力会社様含め、連携を強化していく。目指すのは、有事の際でも、人も企業も地域も「for LONG」 社員とともに事業活動を継続する。そして地域にも貢献し続ける。実現できるように邁進していきます。

この記事のまとめ

「知っている」と「できる」は違う。「BCP」という言葉で片づけてはいけない。ただの絵空事にせずに自分事化して対策に取り組んでいく。森下さんの強い意思を感じた。有事の際に何ができるのか。人も企業も地域も「for LONG」であり続ける。きっと社員とともにより強固な体制が構築されていくだろう。アイジーコンサルティングのBCP対策は進化し続けていく。

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