人間力とデータの共創を目指して 不動産・建築業界におけるデータ活用の可能性

DATE : 2023.05.01
目次

株式会社アイジーコンサルティングでは、「"ずっと"で価値ある未来をつくる」というブランドスローガンに象徴されるように、お客様(個人・法人)との長期的なリレーションシップを重視した事業運営をしている。特に、個人向けサービスのCRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)は、20年以上前から自社開発に取り組み、ブラッシュアップを続けてきた。

法人向けサービスでもCRMの仕組み化を強化しようと、2020年にプロジェクトが立ち上がり、2022年現在顧客企業との商談件数が従来の1.2倍に増えるなど、提供サービスの強化に繋がっている。その取り組みの舞台裏を、パートナー企業・ジーニー社と振り返る。

▶株式会社ジーニー社のWebサイト(https://top.geniee.co.jp/)

この記事のPOINT
  • 進む不動産・建築業界でのデータ活用
  • データ活用で業界課題に挑む
  • 人とデータの共存・共創が、業界の風景を変える
この記事に登場する人
袴田徳朗さん
株式会社ジーニー
GENIEE SFA/CRM 事業本部 コマーシャル営業部 部長代理
美和有輝さん
株式会社アイジーコンサルティング
メンテンナンス事業部 法人営業課 課長

不動産・建築業界で進む、SFA/CRMツールの導入

美和

御社のSFA/CRMツールを導入されている業界に、特徴はありますか?

袴田

実は近年では、不動産・建築業界がナンバーワンなんです。
続いて製造業、人材業界という順です。

美和

不動産・建築業界がナンバーワンというのは意外でした。

袴田

ちょうど導入され始めた時期なのではないかと見ています。
SFA/CRMツールを導入している企業は、全業界の上場企業のうち、およそ30%と言われています。

美和

思っているよりも低い数値で驚きました。
導入される企業さんのきっかけとしては、どのような課題感が多いですか?

袴田

顧客情報管理に表計算ソフト(Excelなど)を使っておられる企業様が大半ですが、そもそもデジタルデータになっていなかったり、システム化が進んでいなかったりする企業様もまだまだいらっしゃいます。これらをデータベース化したい、というきっかけでスタートする企業様が比較的多いです。

アイジーさんは、すでに基幹システムで顧客情報管理を進められていましたよね。

美和

はい。弊社では20年ほど前から、基幹システムを軸とした顧客管理に取り組んでいて、特に個人のお客様の点検管理・接点管理はかなり仕組み化が進んでいると思います。

法人のお客様(主に工務店様)についても、接点の履歴や取引内容を基幹システムに登録する仕組み自体はあったのですが、営業の現場で積極的に活用していきたいということで、御社のSFA/CRMツールを導入させていただきました。導入から1年が経過しましたが、工務店様への訪問回数が1.2倍になり、提供サービスの向上に繋がっています。

【関連情報】アイジーコンサルティングのSFA/CRMツール導入事例インタビュー

業務の守備範囲が広いほど、威力を増すデータの力

美和

さきほど、SFA/CRMツールを導入する業界として、不動産・建築業が最も多いというお話しがありました。
御社から見て、不動産・建築業界に特有の背景などはありますでしょうか?

袴田

まず前提として、日本全体として人口減少がほぼ確定しています。2050年には今の人口の半分になっているという予測もあります。ということは、お客様も働き手も半分になる。そうした外部環境の中で、売上高や利益をどう維持するかが共通の経営課題だと捉えています。

そのうえで、
不動産・建築業界の特徴は2つあると思っていまして、
・事業活動の守備範囲が広い
・人と人の繋がりが強い
ということがあると思います。

美和

ひとつずつお伺いしたいと思います。
「事業活動の守備範囲が広い」とは、具体的にどういったことでしょうか?

袴田

1社さんが担当されている業務の範囲が広いということです。
たとえば具体的な業務として
・不動産の仕入れ
・設計やプランニングの打合せ
・各種法規への対応
・建築現場の監理
・資材の仕入れ
・職人の管理
・営業活動
・アフターサービス
など、一人のお客様・一件の建築現場に対して、数十人~数百人規模の人が関わり、社内でもいろいろな部門・部署が関わってきます。

こうした中で、例えばお引渡しして1年経ったお客様からお問合せが入ったとします。
お客様のお問合せに対して適切なレスポンスを返すためには、いろんな部門・部署に散らばっている情報を集めて、取りまとめる必要があるのですが、情報のとりまとめだけでも数日かかってしまう、というお話しも伺っています。

美和

まさしく、不動産・建築業界あるあるだと思います。

袴田

そうした時に、そのお客様の過去のデータを一覧でパッと呼び出せるようにするだけでも、お客様への対応品質が上がりますし、社内の生産性が高まります。
加えて、お客様に対してどのようなレスポンス・アクションをとっていくべきか、現場の方の判断をある程度補助できるような仕組みも、実装できる時代になってきました。

美和

それは、AIや機械学習の活用によるものですか?

袴田

そこまでいかなくても、ある程度のことは「情報活用」の範疇で可能です。
もちろんAIの技術開発も進んでいますし、私たちも積極的に取り組んでいる分野ではありますが、それは手段のひとつです。

私たちが重要だと考えていることは、
実際の収益に結びつく取り組みに、どれだけ時間を転換できるかだという点です。

情報の収集や取りまとめに時間を使うのではなく、実際のお客様へのサービス提供をスピーディーに行ったり、もっと言うと上流に遡ってお客様の不安を解消できる一歩先のサービスを新たに生み出したりすることに、時間を使えるかどうかが重要になってくると考えています。

人間力を組織力にする時にも、データを活かせる

美和

もうひとつの「人と人の繋がりが強い」という特徴についてはいかがでしょうか?

袴田

他の業界に比べて、人と人とのお付き合いによって、ビジネスが生まれていくという特性が強いと思います。営業さんや現場監督さんが特に顕著だと思いますが、ベテランになるほど「人脈構築」が、仕事を進めるうえでの暗黙知になっていきます。

美和

アフターサービス業務もそうですね。「お客様情報はベテラン社員の頭の中」ということはよくある話です。個人の経験やスキルに依存してしまいがちです。

袴田

人脈構築や関係構築が暗黙知になっていると、若手の新人社員が採用できても、同じようには仕事ができないですよね。ベテラン社員も、教えたくても上手に教えられない。こうしたすれ違いで、若手が職場に定着しないということもありえるのではないでしょうか。

美和

業界の人材採用・人材育成問題にも繋がってくる課題だということが分かってきました。
その課題に対し、データ活用はどのように影響しますか?

袴田

不動産・建築業界にとって、こうした「人間関係」の部分を数値化していくことが、新しいアプローチになるのではないかと考えています。

たとえば、ベテラン社員の動き方を数値化することで、パターンが整理でき、新人の方でも半年でベテラン社員と同じ動きができるようにすることも可能です。一方で、新人は新人だからこそお客様に可愛がってもらえるという強みもあります。それを活かすという手もあります。

美和

たしかに、対策としては
・ベテラン社員の成功パターンを形式知化して、チームとして共有しやすくする
・新人社員の強みを活かしたパターンを形式知化する
という、両方の方向性がありますね。

袴田

はい。いずれにしても、こうした世代の変わり目のところで生まれる暗黙知と形式知のギャップを、数値化することで把握し、きちんと管理できるようになると、不動産・建築業界の特徴である「人脈構築」という魅力が、さらに活きてくるのではないかと思います。

美和

今の50代・60代の方が、何十年もかけて培ってきたノウハウや知恵を、どれだけ現場に落とし込めるかが、ここから10年間の勝負になりそうですね。

袴田

そのためにも、
・データをどれだけ集められるか
・集めたデータをどれだけ活用できるか
この2点がとても重要です。
それが、「マーケティング」の第一歩だと考えています。

「データ」の広がりが生み出す新たな可能性

美和

今のお話で思い出したのが、弊社での導入時のことなのですが、
弊社の法人営業部門としては、SFA/CRMツールの本格的な導入は、はじめての取り組みでした。現場の抵抗感をいかに減らし、活用を定着させるかが最重要課題だったのですが、
・メンバーの使いやすさ、つまり「データの収集」の側面。
・管理本部の施策の実行、つまり「データの活用」の側面
この2軸で、導入時のご支援をいただいたように思います。

袴田

そうですね。アイジーさんの場合、現場の社員さんの使いやすさの点では、スマートフォンやタブレット端末で、スピーディーに情報へアクセスできること。管理本部の施策の実行の点では、御社の基幹システムとの連携。この2点がポイントだったと思います。

タブレット端末でSFA画面を見ながら社内打合せ
美和

導入後も、毎月活用状況について打合せいただくなど、サポートが手厚く感謝しています。これまでにも様々なツールを活用しましたが、「導入しっぱなし」という状態になってしまうこともしばしばで、せっかく導入したのだからと惰性になってしまうこともありまして…

袴田

我々も、最初から手厚いサポートができていたわけではありませんでした。
美和さんが仰ったように、サポートできないことで、ツールの活用が停滞してしまうお客様も出始めてしまい…我々がご提供しているSFA/CRMツールは、日常的にどれだけ活用いただけるかが提供価値の本質だということで、数年前から人員を増強し、取り組みを強化しているところです。

美和

そのような経緯があったのですね。

袴田

「マーケティング」の側面から見ますと、「情報基盤を整備する」のが第一ステップで、マーケティング活動はその先にあります。
第1ステップでくじけてしまうと、次に進めないんです。

美和

まさに、「情報の収集」の部分の課題ですね。

袴田

ですので、サポート時に重視する指標としては、SFA/CRMツールへの「情報入力率」や「ログイン回数」があります。
あとは、個社ごとにKPI(重要業績評価指標)にされている活動量の指標です。
KPIの達成が成果に繋がっていくわけですが、我々がご支援できるのは、KPIの進捗を可視化をするところまで。実際に取り組んでいただくのは企業様です。

弊社としては、
「KPIとしては今こうなってます」
「情報入力率はこうですよ」
「目的に沿って活用できてますか?」
「ゴールに対する達成状況はどうですか?」
ということを、きちんと可視化させていただき、結構しつこくやっているかと思います。

美和

たしかに、毎月かなり強力にサポートいただいています。

袴田

最初は抵抗感を感じられる企業様もいらっしゃるのですが、導入していただいた以上は成果に繋げていただきたいと思いますので、弊社としてはかなりパワーをかけて取り組んでいます。
このあたり、アイジーさんの法人営業部門でも共通する考え方なのではないですか?

美和

仰る通りで、弊社が工務店様へ提供しているサービスを「住まいのアフターマーケティング」と位置づけています。
お引渡し後の工務店様とお施主様の関係性を進化させていくことを提言したものです。

【関連情報】アイジーコンサルティングの工務店様向けサービス コンセプト

美和

ですので、工務店様とのお取引は単発ではなく、10年・20年と長期でお取引させていただくことを前提に考えています。
ただ正直、御社ほど手厚くできているかというと、まだまだだなということを感じていて、SFA/CRMツールの活用はもちろんですが、御社の取り組みをキャッチアップさせていただきつつ、今後強化していきたいと考えています。

袴田

アイジーさんの場合は、数千社という数多くの工務店様とのお取引があるという特徴を活かして、工務店様のニーズや要望を新たなサービスに繋げていく役割ができるのではないかと思っています。
集まったニーズや要望を、御社のサービスに繋げることは当然ですが、他の企業さんを巻き込んで、新しいサービスを生み出していくとか。当然、御社の人数や体制もあるかと思いますが、御社の今の立ち位置であれば、そこまで広げていくことができるのではないかと。

美和

ありがとうございます!とても興味深い構想です。
実は昨年(2022年)、「アイジーサミット」と題して、弊社とお取引いただいている工務店様同士が繋がる場の提供を、弊社として初めて行いました。経営課題や取り組み事例の共有ができたと、ご参加いただいた工務店様からも大変好評をいただきました。このような取り組みを、もっと強化していきたいと思っていたところでした。

【関連情報】第一回アイジーサミット 開催レポート

第1回 IGサミット参加者の皆様と
袴田

そうでしたか!
今後の発展的な「情報活用」の取り組みも含め、引き続きご支援させていただきたいと思います。我々も楽しみにしています。

この記事のまとめ

ジーニー社は「誰もがマーケティングで成功できる世界を創る」というパーパスを掲げている企業だ。
"マーケティング"というと「大手企業のやること」「CMや広告を打つ予算などない」と思われる方がいるかもしれないが、ジーニー社が提供する「GENIEE SFA/CRM」を活用した「マーケティング」は、むしろ地場に密着し、地域の特性を生かした経営をしている企業が、よりファンを増やしていく一連の取り組みを指している。必ずしも人員を割り当てたり予算を割くことではなく、いかに企業としてお客様と向き合うかが本質であり、その具体的手法のひとつが、データ活用による関係構築(SFA/CRM)だということを再認識する対談だった。
地元に根差しファンを増やすことは、今後の工務店経営にとっても、重要な経営課題のひとつだろう。今回の記事が、何かヒントになれば嬉しく思う。


▶株式会社ジーニー(https://top.geniee.co.jp/)


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