カゴメ・山口社長×hintゼミメンバーで「チームづくり」をガチトーク![カゴメダイバーシティDAY 2023]

DATE : 2023.09.04
目次

人材の多様化やビジネスのグローバル化などの環境変化をうけ、「ダイバーシティ&インクルージョン」「DEI(ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン)」を推進する企業が増えてきました。上場企業・大企業はもちろん、非上場企業や中小企業でも、社員が気持ちよく働き、個々の能力を最大限発揮するための考え方として注目されています。

カゴメ株式会社では、従業員のダイバーシティへの知見を深めることを目的に、社外から有識者・専門家を招いた社内公開フォーラムを、2016年から年に1回開催しています。
セミナーや研修の形式ではなく、ゲスト講話とカゴメ社の経営トップを交えてのトークセッション形式で、参加者の皆様もチャットでコメントや質問をするなど、双方向のコミュニケーションがとれる企画が特徴です。

ご縁あって、2023年7月5日に開催された「カゴメダイバーシティDAY 2023」にて、アイジーコンサルティングの佐原が、株式会社hint・斉藤さん、株式会社ソーシャルインテリア・豊田さんと共に、ゲストとして参加させていただきました。
そして各社様のご厚意で、当日の様子を365+1でご紹介できることになりました。

台本なしのトークセッション!
リアルガチで繰り広げられた、貴重な内容です。
ぜひ皆様の組織運営のヒントの一助となれば幸いです。

カゴメ株式会社のダイバーシティへの取り組みはこちら

この記事のPOINT
  • 「いいチーム」って、どんなチーム?
  • 「いい人の仮面」や「強がりの仮面」に気付いたときが、行動のチャンス!
  • 壁にぶち当たった佐原さんが実践した「チームづくり」とは?
この記事に登場する人
山口聡さん
カゴメ株式会社
代表取締役社長
「自然を、おいしく、楽しく。」でおなじみ、 カゴメ株式会社を率いるリーダー。
1899年は、カゴメとアイジーの創業年。
山口さんの出身地・浜松は、アイジーの本社所在地。
ご縁を感じます…!
斉藤徹さん
株式会社hint
代表
チームづくり・事業づくりを学ぶ「hintゼミ」を運営している 株式会社hintの創業者。
著書に「だから僕たちは、組織を変えていける」。
hintゼミでの呼び名は「とんとん」。
豊田美穂さん(とよみほ)
株式会社ソーシャルインテリア
「よいものを長く使う、循環社会の実現」をミッションに掲げ、オフィス構築支援や家具のサブスクリプションサービスを手掛けるベンチャー企業・ 株式会社ソーシャルインテリアで、HRチームとしてご活躍。
hintゼミでの呼び名は「とよみほ」。
佐原康隆さん(アガベ)
株式会社アイジーコンサルティング
マネージャー
「地球品質」というコンセプトのもと、静岡県・愛知県で木造注文住宅を手掛ける アイジースタイルハウスのマネージャー。
hintゼミでの呼び名は「アガベ」。アガベという植物をこよなく愛しているため。

なぜ、ダイバーシティ&インクルージョン?

冒頭、カゴメ社でダイバーシティ&インクルージョンの実現に力を入れているのかについて、メッセージがありました。

カゴメさん

イノベーションを起こしながら、持続的に成長し続ける企業であるために必要な考え方です。そして、ダイバーシティ&インクルージョンを、カゴメの「カルチャー」として定着させていきたい。そのためには、一人一人が「行動してみる」ことが大事です。

その後、視聴されている従業員の皆様へ「今の気持ちを擬態語で教えてください」という呼びかけがされると、即座にものすごい数のコメントがチャットへ投稿されました。

・ほんわか
・ポカポカ
・ワクテカ
・ニコニコ
・ウキウキ

など、ポジティブなワードで埋め尽くされました。

「心理的安全性」とは?

さっそくトークセッションのファシリテーター、株式会社hint・斉藤さんに進行をバトンタッチ。

斉藤さん 先ほどのチャット、ステキなメッセージばかりでしたね。社風が現れているのではないでしょうか。イントロからとても安全な雰囲気が漂っています。
安全な場とは、思ったことを率直に話せる場。なので、今回のトークセッションは、台本なしで進行します!

続いて、斉藤さんから「心理的安全性」について、おさらいのミニ講義です。

斉藤さん 「心理的安全性」とは、一言で言うと「なんでも話せる場」です。
「心理的安全性」は、20年前(1999年)に、エドモンドソン教授が発表した言葉です。
それが世界に広まったきっかけは、グーグルが行った調査結果です。成功するチームの共通点を分析した結果、「5つの鍵」が見つかったのですが、そのうち最も基盤になるものが、エドモンドソン教授が提唱した「心理的安全性」だと分かったのです。

今では多くの企業が注目している「心理的安全性」。
ここまで注目されるようになった背景には、社会環境の変化によって、企業経営の成長エンジンが変わったことがあります。

斉藤さん 20世紀までの工業社会では「業務の標準化」が成長エンジンでした。
しかし、現代の知識社会、変化の激しい時代においては標準化は当たり前。
新たな成長エンジンは「斬新なアイデア」です。変化に直面している現場のチームが、アイデアを出せるようになるための土台が、「心理的安全性」なのです。

さらに、斉藤さんから、心理的安全性に関する「3つの場」が紹介されました。

3つの場

(1)自論を戦わせる場 「自分の意見を通したい」という思いから生まれる場。無能や馬鹿だと思われなくないという価値観によって、「強がりの仮面」をかぶっている状態。

(2)空気を読みあう場 「いい関係を保ちたい」という思いから生まれる場。傷つきたくない、傷つけたくないという価値観によって、「いい人の仮面」をかぶっている状態。

(3)本音で共創する場 「価値を生み出したい」という思いから生まれる場。異なるアイデアをかけ合わせたいという価値観によって、「自然体」でいられる状態。

斉藤さん 皆さん、「本音で共創する場」を目指したいですよね。
そのためには「強がりの仮面」や「いい人の仮面」を外すことが必要です。

仮面を外すには、勇気がいります。
勇気を出して行動するには、仮面をかぶっている自分への「気付き」がきっかけになります。たとえば、「強がりの仮面」であれば、有能な人だと思われたい反面、それでは長期的には信頼されないという気付き。「いい人の仮面」であれば、いい人だと思われたいということは保身だという気付きです。

「あれ?もしかして私、仮面をかぶってるかも…?」と、ギクッとされた方。
安心してください。
斉藤さんは、「仮面をかぶること自体は、悪いことではない」と提言されました。

斉藤さん 「強がりの仮面」「いい人の仮面」をかぶることは悪いことではありません。
「子どもの自然体」から「大人の自然体」へ成長する過程だからです。
他者への配慮が高まることで「いい人の仮面」が生まれます。
自己への追求が高まることで「強がりの仮面」が生まれます。
この両サイドへブレる経験をしながら、「他者への配慮」と「自己への追求」のバランスをとれる状態が、「大人の自然体」です。

仮面をかぶることは、「大人の自然体」への成長の過程。
大切なことは、「あ、今自分は仮面をかぶっているな」と気づくこと。
そして、気付いたら「他者への配慮」と「自己への追求」のバランスをとるため、行動に移すこと。
でも、どうやって行動に移していけばいいのでしょうか?

斉藤さん 今回登壇されている豊田さん(とよみほさん)・佐原さん(アガベさん)は、それぞれご自身の「仮面」を外して、自分から一歩を踏み出し、チームを変えた経験をお持ちです。
豊田さん(とよみほさん)は「いい人の仮面」を、佐原さん(アガベさん)は「強がりの仮面」を、それぞれ外しました。
その経験について、これから聞いていきましょう

※「心理的安全性について、もっと知りたい!」という方は、斉藤さんの著書「だから僕たちは組織を変えていける」をご覧ください
『だから僕たちは、組織を変えていける』公式サイト

いい人の仮面を外したお話

株式会社ソーシャルインテリアの豊田さん(とよみほさん)の経験談では、兼務メンバーが多く連携が取りづらい状況だったチームを、チームのミッションをつくるまでに至ったエピソードが共有されました。

セッションのやりとりは、 「dot」の皆さんのグラフィックレコーディングによってまとめられました。

この経験談をもとに、カゴメ・山口さんとの対話が始まりました。

山口さん 対話の取り組みをはじめてから効果が出るまでに時間がかかると思いますが、ターニングポイントになったできごとはありましたか?

とよみほさん 「苦手の共有」をしたことが、きっかけになったと振り返って思います。
お互いの好きなことはなんとなく分かっていたのですが、苦手を共有したことで、本音を出せるようになったと感じています。

山口さん 苦手を共有するときは、自ら率先して「私はこれが苦手です」という話をして、そういうのが呼び水になったのでしょうか?

とよみほさん そうですね。私も割と淡々としているように見られがちなので、自分からやってみようと持ち掛けて、苦手なことについて話ができたのは、良かったかなと思います。

他にも、実際の現場あるあるな状況をテーマに、示唆に富む対話が繰り広げられました。

強がりの仮面を外したお話

つづいて、株式会社アイジーコンサルティング・佐原さん(アガベさん)の経験談では、トップセールスからマネージャーになって直面した「強がりの仮面」エピソードが共有されました。

セッションのやりとりは、 「dot」の皆さんのグラフィックレコーディングによってまとめられました。

弊社の社員のエピソードなので、少し詳しくご紹介いたします。

なぜ、「強がりの仮面」をかぶってしまっていたのでしょうか?

アガベさん 私は2006年から2015年までの10年間、全社トップセールスでした。そのうえで2012年にアイジースタイルハウス名古屋店の店長になったという背景があります。
トッププレーヤーからマネージャーになった私には、自分にできていることが、なぜ部下ができないのか分かりませんでした。また、当時私は20代後半で、部下は全員年上でした。
こうした状況から、統制型組織の極みのような状態になっていきました。

アガベさん しかも、統制型組織にすると、短期間では成果が出てしまうんですよね。私は店長になって1年で一気に成果が出ましたので、「よっしゃ、このやり方でいける!」と勘違いしてしまいました。
こうして私は「強がりの仮面」をかぶったまま、強権的な統制型の組織運営にますます拍車をかけていきました。

どんな気付きで、「強がりの仮面」を外そうと決意したのでしょうか?

アガベさん 当時、名古屋のチームのNo.2だったメンバーから、「誰もあなたにはついていきませんよ」と言われたことがきっかけでした。

山口さん どういう経緯で、そのような話になったのですか?

アガベさん 組織が崩壊しかけていたので、No.2のメンバーから私の上司へ話が上がったんです。そこで、私の上司の発案で、上司も立ち合いのもと、チームメンバー全員で研修が行われました。

その時、上司が参考にしたのが、リクルート社が提供している 「ファミリー・トレーニング」という組織開発トレーニングの手法です。上司も、過去にチームの風土改革が必要な状況に直面したとき、リクルート社の支援のもとチーム全員でトレーニングに取り組み、危機を脱した経験を持っていたそうです。

このため、当時の私のチームの状況に合わせて上司がアレンジし、メンバーから私に対する意見…ほとんど悪口や直してほしいところでしたが笑…そういったメンバーの思いを洗い出す場として行いました。

山口さん かなりインパクトのある研修ですね…

アガベさん はい。そうでもしないと、No.2のメンバーでも、怖くて私に意見が言えない。それほど統制が強くなりすぎていたんです。
1日かけて、メンバーから洗いざらい思いを吐き出してもらったのですが、そこではじめて「こんなにメンバーを苦しませていたのか…」と、自己変革の課題に向き合うことになりました。

当時の私としては、自分が頑張ることでメンバーが成長すると信じていましたし、多少メンバーに負荷がかかっていたとしても、そこまで酷くはないだろうと思っていました。
なので、メンバーからの率直な意見を聞いて、自分の存在価値を見失うほどショックを受け、同時に反省しました。

山口さん 今となっては「自己変革できてよかったです」というお話しだと思うのですが、当時は相当ハードな状況だったのではないかと想像します。どうやって立ち直っていったのでしょうか?

アガベさん 正直、すぐには立ち直れませんでした。ただ、私自身がストレス耐性が強いということを上司も分かっていましたし、それほどまでにチームの状態が悪かったということだと思います。
そうは言っても辛かったのですが、それでも立ち直れたのは、私自身が気付いて行動を変えていったことに対して、メンバーがきちんと反応してくれたことです。メンバーに救われましたね。

名古屋のチームが生まれ変わるまでの道のりは?

アガベさん その後、数字・数字の統制型マネジメントから、メンバーとの関係性を優先したうえで実績を出すマネジメントに、180度転換していきました。

山口さん 転換の過渡期をどのように乗り切ってこられたのか、どうなったときにチームの空気が変わったのかがとても気になります。

アガベさん マネジメントや数値管理のやり方は、急に180度切り替えたのではなく、徐々に切り替えていきました。
具体的には、「結果」を追い求めていたところを「行動」に変えてみたり。
「なぜこれをやるのか」という理由の説明をしていなかったのを、きちんと説明したり。
ティーチングから始めて、徐々にコーチングへ変わっていったのだと思います。

山口さん では、ガラッと変えたというよりは、グラデーションをもたせて変えていったイメージですね。

アガベさん そうですね。
ただ、自己変革だけは、翌日から、180度ガラッと変えました。
・貧乏ゆすりをやめる
・身だしなみと整える
・メンバーを呼ぶときに「さん」をつける

小さなことに思えますが、実はそうした小さなことの積み重ねが、メンバーとの信頼を壊すことにも、信頼を作ることにもなるんだなと実感しました。

2016年4月、名古屋の店舗は年間MVPに輝いた
受賞後の佐原さんとメンバー
浜松のチームでは、どんなことをメンバーと話していますか?

アガベさん 浜松のチームは、負け癖がついて愚痴ばかりのバラバラな風土だったところから、一人一人の強みを活かした自走するチームへ変化しました。
浜松のチームでは、一人一人と「対話」することから始めて、ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)を構成し、「なぜ」を共有する取り組みを進めていきました。

斉藤さん メンバーとは、どんなことを話したのですか?

アガベさん 実務的なことよりも、「どんな会社にしたい?」「どんなことをしたい?」といった、夢の話をしました。そこから、目的にブレークダウンし、目標に落とし込んでいきました。

斉藤さん アガベさんが問いを投げかけ、相手の方が言語化していくイメージですね。

山口さん 話し合いの場で、メンバーが沈黙したりすることはなかったのですか?

アガベさん ありました。なので、最初はルールにしました。
メンバーを3人チームに分けて、「自分の意見を話す」ことに慣れてもらうようにしました。これは経験上ですが、4人以上になると話を聞いていない人が出てきたので、最初は「3人」がいいのではないかと思います。
1年くらいかけて、メンバーが慣れてきたので徐々に人数を増やしていきました。

アガベさん 現在は「チーム運営」ということで、6人チームで各種課題に取り組んでいます。打合せでは、沈黙の時間はないくらい、全員がすごい勢いでしゃべりまくっていますよ。
現場がどんどん動くので、マネージャーが状況把握するのが大変なほどです笑
定期的に結果を検証し、軌道修正しています。

メンバーの意見がたくさん出るからこそ、工夫していることは?

斉藤さん メンバーからたくさんの意見が出ても、すべてを実現できるわけではないですよね。工夫していることはありますか?

アガベさん メンバーから出た意見は、すべてまとめて、「リーダー会」で揉んでいます。リーダー会は、各課の代表者4名で運営していて、ここでアウトプットを決めて行動しています。

斉藤さん 原案として集約したあと、個々の課題を具体的に検討しているのですね。

アガベさん そうですね。メンバーとしても、リーダーから出てくるアウトプットに、自分の意見が盛り込まれているので納得感があるようです。「リーダーが言うから…」という雰囲気ではありませんね。
軌道に乗るまでに時間がかかるというデメリットはありますが、行動に移しやすいため、結果として成果や実績に繋がりやすいという実感があります。

セッションを振り返って

斉藤さん 今回は「台本なし」で進行しましたが、ここまでざっくばらんに話をしていただく機会は少ないのではないでしょうか。皆さん、いかがでしたか?

とよみほさん カゴメさんが、今日のような機会をつくっているのがとてもステキだと思いました!私自身もまだ道半ばです。今日の対話を通して、またチャレンジしたいという気持ちになりました。

アガベさん カゴメさんが「会社」として取り組まれていることが素晴らしいと思いました。今日は私のチームの事例をお伝えしましたが、弊社は会社全体で取り組んでいるわけではありません。会社に戻ったら、私自身の影響の輪を広げていこうと決意しました。

山口さん 今日のテーマは「半径5メートル」です。ここを変えることができなければ、何も変わりません。しかし、半径5メートルを変えられたら、その先はもっとスムーズにいくと思います。最初の5メートルを、繰り返し、継続して、行ったり来たりしながら取り組むことが重要だと思いました。

斉藤さん 「いい人の仮面」であったり、「強がりの仮面」であったり、立場によって半径5mの課題はそれぞれ違うと思います。それぞれの立場で、今日のお話しの中から1つ「これやってみようかな?」と思ったことを、ぜひ行動に移していただけると嬉しいです。
ありがとうございました!

【合わせて読んでいただきたいコンテンツ】
 
佐原さん(アガベさん)へのインタビュー
「迷った時は、心が震えるほうへ。」
 
アイジースタイルハウス
アイジースタイルハウスWEBサイト
 
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