工務店様と共に住宅市場の未来を切り拓く|新建新聞社 × アイジーコンサルティング トップ対談(後編)
- 住宅業界の未来について考える
- 多くの工務店様との関わりの中で感じること
- 「問題の発明」と「経年進化」で新たな価値を創造する
「新建ハウジング」発行人
代表取締役
専務取締役
同質化が進む住宅市場において大切なこと
井上さん SNSの発展に伴いプロシューマーが増え、同質化が進む中で、基準を満たしながらも個性を伸ばすことが求められています。個性や魅力を引き出し、尖らせるためには、どのような方法やポイントがあると思いますか。
三浦さん これは明確で、先ほど教えていただいた「角熟」という言葉につながると思うのですが、個性の原点は価値観だと思うんです。 価値観とは、何を良いと思うのか、何に価値を見出すのかという部分です。例えば、アイジーさんの掲げる「経年進化」を目指すというのも一つの価値観です。それが個性を形作り、会社や人それぞれの違いを生み出します。価値観が明確でない場合、他社のやり方を真似することになりがちですが、それでは個性は育ちません。
価値観というのは人、一人ずつ違いますよね。会社ごとに違うと言えば違うんです。だから一番個性を失わずに星のまま生きるには価値観を磨くということに尽きるのかなとは思います。
もちろん、最低限クリアしなければならない基準はあります。例えば住宅会社であれば、安心感や性能は不可欠です。ただ、その上でどうやって選ばれるかは、価値観をベースにした個性が重要です。それがサービスや製品の魅力となり、最終的には顧客に選ばれる要素になるのだと思います。
井上さん 三浦社長から自社の価値観を伸ばしていくというお話がありましたが、瀧澤社長が経営者としてまた企業として大事にしたい価値観について教えてださい。
瀧澤さん 私たちが一番大切にしているのは「企業は人なり」という価値観です。つまり、人こそが最大の資源であり、差別化の要素だと考えています。経営者によっては人件費を経費と捉える方もいますが、私たちはそれを投資であり、企業の成長につながるものだと捉えています。
私たちは「for LONG ずっとで価値ある未来を創る」を企業理念として掲げ、事業を展開しています。確かに、ノウハウだけを集める企業は一時的に成功するかもしれませんが、それだけではfor LONGとならない、長続きしない場合があります。弊社も過去、そういった面がありましたが、今の姿があるのは、自分たちで価値観を作り、それを社員や協力者、そしてお客様と共有してきたからだと思います。経営とは、そうした哲学や価値観を持ち、それをしっかりと伝えていくことだと本日の対談を通じて改めて感じました。
三浦さん 「for LONG」も良い言葉ですね。短期的にはベンチマーキングやノウハウの集積で成長できるかもしれませんが、長期的に見ると辻褄が合わなくなり、社員も「自社が何を売りたいのか」や「お客様に何を提案すべきか」が分からなくなってしまいます。商品の種類を増やすほど混乱が生じ、売り上げにも影響が出ることがあります。
そのような時に初めて、明確な価値観や理念、行動指針が必要だと気づき、それを社員と共有することが大切だと実感します。企業にとって、人材が最も大切であり、理念で人を束ねることが重要だという点に、多くの企業が最終的に行き着くのではないでしょうか。そこから先は、どれだけ徹底して理念を実践できているかが、企業間の違いになると思います。これは、長期的な視点でのプロセスの一部だと思います。それはまさしく「for LONG」のプロセスですよね。御社はその点で非常に徹底されている印象を受けますね。
瀧澤さん ありがとうございます。まだまだこれからですが、そこはより力を入れていきたいと考えています。今回、三浦社長のお話を伺い、自分が思っているだけでは自己満足で経営でも何でもないので、想いをしっかりと形にして伝えていくこと、どう実践していくかが重要だと改めて思いました。
三浦さん ビジョンや想いを言葉にするって大事ですよね。例えば、弊社の「ソーシャルグッドニュースカンパニー」、アイジーさんの「経年進化」や「for LONG」といったシンプルで強い言葉は、社員にとって覚えやすく、伝えやすいものです。私はこれを「超一言」と呼んでいて、簡潔でありながら、その言葉自体が非常にわかりやすく、強力なメッセージを持つものです。
やはりシンプルで強いワードというのはすごく大事で分かりやすくて伝わりやすい、まさに「経年進化」は超一言ですよ。こうした言葉があることで、理念が社員にしっかりと伝わり、共有されると思います。今日もアイジーさんからそういった言葉をいくつか学びましたし、「角熟」も同じような強さを持った言葉だと感じています。
瀧澤さん なるほど「超一言」ですね。「for LONG」も「経年進化」も創業以来125年間培ってきた歴史があってこそ生まれた言葉だと思っています。それが「超一言」に当てはまると感じていただけたのであれば嬉しく思います。
良い会社の定義は業種・経営者・社員によって異なると思います。一部上場していること、福利厚生が充実していること、それもいい企業だと思うんですけれど、私の思う良い会社の定義は社員が成長できる企業であることです。企業の成長の上に人の成長があると同時に、人の成長の上に企業の成長があると思っているので、そこをぶらさずやっていきたいですね。
また成長と共に挑戦も大切にしています。本田宗一郎さんの言葉「失敗することを恐れるより、何もしないことを恐れろ」にもあるように、何もしないと現状維持はできず下りのエスカレーター状態で下降していくので、私はどんどん挑戦していけるような風土を社内で醸成していきたいですし、あとはより地域の工務店様などでもそういった意見交換を活発にする場をぜひ作っていきたいなと思っています。
三浦さん 挑戦や成長は、大事なキーワードですね。今の住宅業界に最も欠けている要素かもしれません。もちろん、成長意欲を持つ企業もありますが、多くの企業が現状維持や成長を諦めているように感じます。特に新築市場だけを見ると成長が見えにくいですが、先ほどのアフターマーケティングの話に戻ると毎年、新築着工棟数分アフターの市場は広がっていきます。
そこにリフォーム市場なども広がってくので、まだまだ成長の余地があります。
経営者の役割は、こうした新しい成長分野を見つけ、需要を創造することだと思います。現状に満足すると、若い社員も「これで終わりなのか」と感じてしまいます。だからこそ、成長の意欲を持ち続け、次のステップを見据えることが大切です。まだまだ応えられる需要があるので、多くの企業にそれに気づいてもらいたいですね。
今後の展望
井上さん 最後の質問になります。改めて今までのお話をふまえて、今後、企業としてそれぞれどのような展望を描いていきたいとお考えでしょうか。
瀧澤さん 三浦社長のお話を伺って改めて感じたのは、建築業界では少子高齢化が進む中で、新築の需要が減少していくという現状です。これからは、どこにマーケットが伸びるのかを明確にし、工務店様と一緒に価値を創造していくことが重要だと思います。自分たちだけでなく、工務店様やお客様、そして情報発信をしてくださる方々とも協力して、「経年進化」を実現していきたいです。そういったパートナーシップを大切にしながら、業界全体で成長していける企業を目指していきたいと思っていますし、そういう世界観を創っていくところに我々は舵を切っていきたいです。
三浦さん 私もアイジーさんに同意します。私たち新建ハウジングのビジョンである「変えよう!ニッポンの家づくり」は、私たちだけでなく、読者や工務店、企業と一緒に業界を変えていこうというメッセージです。この業界にはまだ解決されていない問題がたくさんあります。問題だらけで、それがまだ顕在化されておらず発明されきっていないと思うのです。そこで私たちは「問題の発明」を大切にしています。「問題の発明」とは、これまで企業や消費者が気づかなかった問題を提起し、解決策を提供していくことです。
解決策を提供して、儲かりながら世の中を良くしていく。そのためには問題をどう提起するかが大事です。
住宅のアフターはまさに「発明」することです。「経年進化」も経年による劣化を進化に変えるという問題提起の一つであり、「問題の発明」だと思います。
弊社が目指すのは「問題の発明」を次々としていく会社です。まだまだ社会には問題がたくさんあります。それを業界メディアというビジネスモデルで問題提起をしていき、解決していくソリューションを今少しずつ広げているところです。
今までメディアというのは紙媒体が中心でしたが、今はwebもあり、新たな問題提起をしてソリューションを提供するとなった際に様々な媒体での発信が可能です。紙媒体に限らず、動画や教育事業へのソリューション提供など様々な形で問題提起とともにその解決策を提供しています。
最終的には、業界だけでなく消費者の価値観を変えることが、社会全体を良くするための究極の目標です。プロシューマーのような消費者にアフターマーケティングの重要性を伝え、価値観を変えていくことが、業界を変える鍵だと感じていますよ。
瀧澤さん 「問題の発明」はとてもしっくりきました。やはり問題発明の部分に常に価値があり、そこを追い求めていくことは、価値を追求していくことなので、本当にしっくりきました。業界だけでなく消費者と共に世界観を創っていくことに関しても共感します。我々も新建新聞社様とも共に建築業界を盛り上げていければと思います。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
三浦さん アイジーさんは発明企業だと思います。この業界は常に問題提起をした人、気づかせた人が勝ち必要とされる気がします。
住宅に関してももっと「for LONG」で考えていくという価値観を本当は消費者にもっと伝えていきたいですよね。アイジーさんと一緒にできることは色々ありそうです。ぜひ共に建築業界を盛り上げていきましょう。
今回の対談は、今後のアイジーコンサルティングの方向性を明確にしていく意味でも、大変意義のある機会となりました。弊社は昨年から新体制となり、新たなビジョンと共に、1年間事業運営をしてきました。昨今の目まぐるしく変わる社会情勢の中で、我々が今後どのような価値を世の中へ提供していくのか、その方向性がさらに鮮明になったように感じます。
また、三浦社長の「問題の発明」が大切であるとの言葉は大変刺激になりました。「住まいは経年進化する」この言葉は、住宅業界へ向けて問題提起を行うインパクトのある特別な言葉だと思います。選ばれ続ける企業となるためにも、このビジョンを皆さんと一緒に創造していきたいと改めて強く感じております。今後ともよろしくお願いいたします。
(インタビュアー: 井上元太)