選ばれ続ける工務店・職人であるために。三浦社長による「住宅産業大予測」講演をアイジーワークスで開催。

DATE : 2024.05.30
目次
2024年2月9日、ライフプラン事業部の工事業者による協力業者会=アイジーワークスに三浦祐成様(株式会社新建新聞社 代表取締役社長)をお招きした。浜松・豊橋・名古屋全エリアの取引業者が浜松に集まり、三浦様による2024年の住宅市場についてのご講演を拝聴。住宅市場の推移と合わせて、今後選ばれ続ける工務店・職人はどのような人たちなのかを、データに基づき解説いただいた。

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この記事のPOINT
  • 自分を客観視して、仕事をする上での核を見つけること
  • 真面目に、高い技術を持って取り組む職人に仕事が集まる
  • 凡事徹底し、関係性の質が良くなれば仕事はうまくいく
  • 付加価値の高い仕事で「三方良し」を実現する
この記事に登場する人
三浦 祐成
株式会社新建新聞社
代表取締役社長
新建ハウジング・リノベーションジャーナル・住宅産業大予測シリーズなど多数執筆。探索者の視点から住宅産業の動向や生活者のデータを読み取り、工務店の取るべき道筋を提示している。
清水 克哉
株式会社やね清 代表
アイジーワークス浜松豊橋エリアの会長。アイジースタイルハウスの屋根工事を担当し10年以上のお付き合い。
村上 拓也
株式会社心創 代表
アイジーワークス名古屋エリアの会長。今年で会長歴2年目。主に電気工事を担当している。
立田 裕樹
株式会社アイジーコンサルティング
常務取締役
2006年にアイジースタイルハウスを立ち上げた、アイジースタイルハウスの担当役員。

アイジーワークス各エリアの会長挨拶

清水様 本日は浜松・豊橋・名古屋、全エリア合同での開催となりました。せっかくの機会ですので、初めて顔を合わせる皆さん同士でコミュニケーションを取っていただければ、お互いに良い刺激になるのではないかなと思います。
私自身、新築住宅の需要が減っていく中で、この先どう生き残っていこうか?ということを常に考えています。もちろん皆さんも日々考えて、思考錯誤されているとは思います。その上で、自分や自社が今どんな状態なのかを客観的に理解することも大事なんじゃないかなと思っています。先日、浜松のアイジーワークスメンバーや立田さんと一緒に、自分を見つめ直す時間を作りました。自分の核、大事にしたいことは何なのかを考えたんです。今日三浦社長にお話いただく今後の住宅業界のことと、自分の核を照らし合わせてみると、この先のあるべき姿が見えてうまくいくのではないかなと思います。その第一歩としてまずは業界のことを理解して、明日からの仕事に活かしていきましょう。

村上様 今までは同じアイジーワークスに属しながらもなかなか接点を持つことが出来ない状態でしたが、今回は合同で開催されることになり、こうやって直接お会いできてとても嬉しく思っています。

私が電気工事を請け負う中で、①チームを作ること、②品質を上げること、③無駄をなくすことの3つに取り組んでいます。無駄を減らして生まれた余白に、何か価値向上に繋がる行動を取り入れるよう意識しています。しかし、同業者の中には「真面目に取り組むことがバカバカしい」と不貞腐れた発言や行動を目にする事があります。自分自身もそういう気持ちになることはありますが、真面目に取り組むことは決してバカバカしいことではないと思うんです。自分にしか評価できないことをしっかりやる。これを私の芯に据え、仕事に取り組んでいます。

去年からアイジーワークス名古屋の会長を務め、2年目に入ります。自身の発信が名古屋全体に波及し、浜松や豊橋の皆さんにも影響を与えられるよう、模範となる活動を行っていきたいと思っています。今年は特に浜松や豊橋の方々と協力し、全体が向上するような活動を展開していきたいと思っています。よろしくお願いします。

三浦様の講演|住宅業界の予測

三浦様 毎年末に「来年の住宅業界はどうなるんだろう」ということを一人籠って考えて『住宅産業大予測』という書籍を出版しています。今日はこの中から皆様に少しでもお役立ちできるようなお話ができればなと思っています。僕たちは住宅業界の専門メディアとして「変えよう!ニッポンの家づくり」という理念を据えています。日本の家づくりをより良く変えたいと結構本気で思ってまして、そういう意味でもアイジーさん・アイジーワークスの皆さんがやってらっしゃる家づくりに共感をするところがあります。

じゃあどういう風に住宅業界を変えるのか?僕は『ウェルビーイング』という言葉を使いますが、要はみんながハッピーになるような家を造る工務店さんが増えればいいかなと思ってるんですね。暑い・寒いとか光熱費がかかる家みたいな、いわゆる『住宅貧乏性』から抜け出すために、高断熱の家づくりをずっと提案してきました。そして震災に対して不安を感じることなく暮せるような家を造りましょうというお話をしてきました。更に、住宅を買って貧乏になるんじゃなくて、良い家を建てたらその家を売った時に少しそのお釣りが返ってくる、資産価値の高い家づくりをしていって欲しいと思っています。業界の皆さんにとって、資産価値がない二束三文の家を造りたいのか、それとも資産価値がある、つまり住宅が貯金箱になるような家を造りたいのか、どちらが良いですか?

三浦様 住宅着工棟数が減っていると言われていますが、本当に減っています。平成13年、新築注文住宅は全国で約38万戸建っていました。令和3年には約22万戸まで減っています。そして令和4年は令和3年に比べて11.3%減少、令和5年は令和4年に比べて11.4%減っています。なので令和3年と比べると合わせて2割ほど新築注文住宅の仕事が減っているんです。もちろんそれに比例して職人さんの仕事量も減っています。じゃあどんな職人さんの仕事が無くなっているのかというと、僕自身は「真面目ではない職人さんの仕事が減っている」のではないかと考えています。先ほどの村上さんのお話にあった通りですね。

また住宅の費用は2008年から約2割ほど増えています。注文住宅にあてる予算データの推移を見ると、2023年に注文住宅を建てた方の平均予算が3091万円だったんですね。2016年の調査だと平均は2700万円だったので、この頃と比べると平均予算も300万円ぐらい上がっているんです。
高くなった原因の一つは、ウッドショック以降の様々な資材高騰が影響しています。それから職人さんの手間も上がっています。一方で、一般の人の手元に残るお金はずっとマイナスです。少しずつ給料を上げているつもりなんだけど、手元にお金が残らない。つまり住宅の予算は無いのに住宅の値段だけ上がっていて、当然買えない人がたくさん出てきています。注文住宅は高くなってしまったので、買えない人がどんどん中古や賃貸の方に移っていって、注文住宅の着工棟数が減っているという状況なのです。

こういう状況下なので、ハウスメーカーさんも軒並み着工棟数が減っています。工務店さんの中には生産性や住宅単価をしっかり上げて、その分質の良い家を提供できているところは受注が増えています。ただし、前から経営状態が芳しくなかったところは、力尽きて倒産をされたり、場合によってはM&Aで大企業に吸収されていたりもするんです。人も流動的で、給料の高い工務店やハウスメーカーさんへ転職される方も増えているので、小規模組織で社長の右腕をやっていたような方が居なくなったりすると更に追い込まれていきます。逆に、良い会社からすると優秀人材を迎えられるチャンスかもしれないので、会社によってはピンチではなくチャンスもあるんじゃないかと思います。

お客様が選ぶ基準は?

三浦様 この状況下で、お客様は何を基準に工務店を選ぶのでしょうか?実際にとったアンケートを元にお話をしていきます。30代の方々の結果を見ると一位はやはり値段なんですけど、二位は耐震なんですね。これは先日の能登半島地震が起きる前にとったアンケートなのですが、以前からずっと若い方々は耐震に関心を寄せていて、耐震性の高い家づくりをしているかどうかが決め手になっています。今Youtubeで地震シミュレーションの動画なども上がっていますし、それらを見ることでお客様も知識を得ています。だからこの先、良い性能の家を造ることはとても大事で、アイジーさんの家づくりに対する様々な取り組みもここに繋がってくるんですね。

性能基準がいわゆる足切り点になって、耐震等級3でないと選ばれないという時代になってきました。選ばれるための基準を満たしつつ、各社の理念に基づいてプラスαの取り組みをおこなったり、社会貢献していくことで差別化を図っていく必要があります。

三浦様 着工棟数が減り、職人さんの仕事が減るとは言いつつも職人不足であることは間違いないんですね。職人さんの数自体が減っているその背景には、若い職人さんの離職が多く定着しないことや、一時期増えた海外からの技能実習生さんたちも円安の影響で他国に働きに出てしまうことが影響しています。更には「建設業2024年問題」と言われている通り、残業規制に伴い働き方の見直しが必要になる中で、人手に頼らない機械化や効率化が加速していくかもしれません。これからは手仕事を大事にする家づくりと、手仕事をなるべく排除した家づくりに二分化していくだろうなと思います。人手に頼らない家づくりに走ることも悪くないですが、真面目にやっている技能の高い方に仕事が集まるという風土に落ち着くんじゃないかと考えています。つまり最後は人が全てなんですね。良い社員が、良い職人が定着してくれるかどうかで業績が変わってきます。

仕事がうまくいく方法

三浦様 最後に、僕なりの「仕事がうまくいく方法」を考えてきたので皆様に共有をさせていただきます。まず一つ目は「凡事徹底」です。当たり前ですけど、凡事徹底が一番難しいと思っています。お施主様へのアンケートで「住宅会社のどこに不満を感じましたか?」という質問をしたら、施工が雑だったりミスが多いという回答をされた方が全体の3割もいらっしゃるんです。打ち合わせの内容が監督や職人に伝わっていない、連絡や質問に対してのレスポンスが遅いなどのクレームもありますが、これらは全て凡事徹底で解消できることだと思うんです。凡事徹底されていればお客様の満足度も上がり、評判も広がり、次の仕事に繋がっていきます。凡事徹底を、工務店だけでなく職人さんまで行き渡らせることが出来るかどうかが重要です。取引業者や協力業者の集まりの会に行くと、その雰囲気や関係性が一目で分かります。金でつながっているだけの関係と、協力し合っている関係とでは雰囲気は大きく異なります。お互いに協力し、良い家を建て、お客様のために最善を尽くすことで、共に発展していく可能性があります。取引関係ではなく、このような『協力関係』を築くことが大切だと感じます。その上で「関係性の質」に着眼してみて欲しいです。工務店と職人が対話をする、職人同士で対話をする。そういった機会を増やすことで、もっとお客様のために出来ることがあるんじゃないかと話し合えたり、取引の境目の部分を協力し合えたりします。この協力業者会というのはそのためにあると思うので、こういう場を積極的に活用して頂きたいなと思いました。

あとは「希少価値」の高い人材になることです。自分にしか出来ない仕事があると、求められる人材になります。普通の人がしない思考や発想・行動で貢献をしたり、特殊な知識や能力を持っている高いレベルのスキルを磨いたりも、そうですね。そのために努力し続けられるマインドがあることもセットかなと思います。

建築業界では、売上に対して原材料費を引いて残った金額を「粗利」と言いますが、他の業界では「付加価値」と言ったりします。みんなが頑張って良い仕事をして、仕事に対しての価値を高められれば粗利が増えるという風に考えられます。ここにいるみんなで価値の高い、良い仕事をすれば、職人さんにも利益還元できますし、お客さんの満足度も高まります。これからの住宅業界で、三方良し(お客様・工務店・取引業者みんなが良し)の実現を目指して、家づくりという素晴らしい仕事を全うしていただければなと思います。

最後に、立田常務より閉会の挨拶をおこなった。

立田常務 貴重なお話をありがとうございました。『三方良し』という話にもありました通り、アイジーワークスを通して皆さんの仕事やお客様にとってプラスになる状態を作りたいと考え取り組んできましたが、こういう学びの多い機会を設けることができて本当に良かったと感じています。

2008年頃に三浦さんのお話を聞く機会がありまして、その時に聞いた「陳列主義ではなく推薦主義」というお話に大変感銘を受けたのを覚えています。世の中にある商品を並べてお客様に選んでもらうのではなく、自社が選んだ良いものだけに絞って提供するという考えですね。それ以降社内でも推薦主義という考え方を共有するようになりました。また、本日は様々な話題がありましたが、三浦さん御本人が実態調査やデータ収集に励んでおり、将来に向けた予測をしている姿勢に感銘を受けました。未来のことを見据えた上で、自分を客観視してどういう風に生き残っていくのかを、ここにいる社員・アイジーワークスの皆さんにもぜひ考えていただきたいと思います。
この機会は、新たな発展のチャンスであり、皆さんが成長していく機会です。我々の会社もそうありたいと思いますので、教訓を活かして頑張っていきましょう。今日みなさんとお会いしながら同じ話を共有できたことは、非常に意義深いものでした。本当にありがとうございました。

この記事のまとめ

漠然と募る住宅業界への不安に対して、その実態をどう受け入れ、自分たちの働き方に変えていけば良いのかを学べる貴重な機会であった。日々アイジーワークスの取り組みの中でも「凡事徹底」に繋がる改善改革が行われているが、これらの活動が自分たちの仕事にどう影響するのかを深く理解できたことで、よりその重要性を感じられた。講演会の後、浜松豊橋エリアと名古屋エリア間でより深い情報共有をしたいというお声をいただき、互いの議事録を閲覧できるようにしたり、現場見学をするなどの計画も立てている。アイジーワークスが一体となり、取引関係ではなく「協力関係」としてこれからも付加価値の高い仕事を生み出していきたい。

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