いまアフター強化が必要な理由とは? 新建新聞社主催「イエトーーク(アフターの達人編)」に登壇
- 「いま」アフター強化が必要な理由は?
- 顧客の囲い込みによって顧客の価値を最大化させる
- リアル×デジタル 顧客との関係性の築き方
- 市場が厳しい今だからこそ持続可能なアフターを
代表取締役
執行役員 兼 アンバサダークラウド事業責任者
代表取締役社長/新建ハウジング発行人
専務取締役/メンテナンス事業部 担当役員
新建新聞社主催 イエトーーク 実務者&開発者本音トーク【アフターの達人編】
「イエトーーク」は、新建新聞社が主催するカジュアルなトーク形式で実務者と開発者がディスカッションし、お役立ちする内容を提供する住宅業界向けのオンライン配信番組です。ゲストによる基調講演を行い、その後、パネリストを招いてトークセッションを行う企画です。 今回は、「アフター」にフォーカスし、生涯顧客化を実現する脱従来型アフター&ホームドクター戦略についてのトークセッションを実施。 住宅業界で生涯顧客化&顧客対応・CXに関わるサービスを開発・提供する企業として、アンバサダー経営を提唱し、紹介口コミを増やすシステム「アンバサダークラウド」を提供するリブ・コンサルティングさん、工務店様の定期点検・アフターを代行している 弊社アイジーコンサルティングが登壇。 また、ゲストとして、生涯顧客化という意志を持って経営を全うし着実に成果を挙げている実務者として、株式会社SAKAIさんに参加いただき、新建新聞社 三浦さんのMCのもと4名で行われました。三浦さん 今回のテーマは「アフター」です。私たち新建ハウジングではアフターのことを「家守り」という言葉で表現しています。昔からこの建築業界では業界の鉄則として、市場や自社の経営が厳しくなるとアフターを強化することが提案されています。
市場が厳しい昨今において今一度「アフター」について考える機会になればとの想いで、今回のテーマを設定しました。ぜひご参考ください。
「アフター」について考えてみよう
SAKAI株式会社 臼井さんから基調講演をいただいたのち、「アフター」をテーマにトークセッションが行われました。 テーマは以下の4つです。 ・「いま」アフター強化が必要な理由は? ・アフター強化の目的の1つ「顧客との関係性の強化」の重要性とその方法は? ・アフターは内製化すべき?外部化できる? ・アフター強化の目的の1つ「クチコミ・紹介、リピート的受注」などのメリットにどうつなげるか? イエトーーク セッションにて、お話した内容を、一部抜粋してご紹介します。石井さん 現在、あらゆる業界で「透明性」が求められており、口コミやSNSの影響力が大きい時代です。住宅会社の選択においては、引き渡し後のアフター対応の透明度が購買決定において重要視されています。住宅事業は将来の経営安定も考慮する必要があり、デジタルマーケティングは手っ取り早い手段ですが、顧客紹介の増加が喫緊の課題です。その中で、アフターサービスの強化が重要な役割を果たしていくと思います。
三浦さん お客様の見る目が厳しくなっていて、特に色々な企業の不祥事が相次ぐ中で、お客様が「透明性」を求めていて、今まであまり見えにくかったアフターというブラックボックス的なところについてもお客さんの関心が高まっているということですよね。それは私たち(新建新聞社)が取っているアンケートで傾向が見られ、住宅会社を選ぶ理由の中に「きちんとアフターをしている」ということが上位に入ってきていますね。
臼井さん、工務店の立場としてはいかがでしょうか?
臼井さん 工務店がアフターをやっているというのは、契約の決め手とまではいかなくても後押しになります。また工務店側が思うメリットと、お客様が感じるメリット・ベネフィットは違うので、そのお客様の本音を知りたくて4年ほど前から私自身も定期訪問するなどアフターを強化し取り組んでいます。またお引渡し後もお客様と継続して関わり続けることで、リフォーム案件・紹介・口コミに繋がると思っています。弊社を選んでくださった理由とは何か。本質を知るには時間がかかりますからね。お客様との関係性構築に力を入れています。
井上さん 着工棟数が減少している中で、特に中小企業ではエリアの拡大・水平展開をするにはマーケティングや広告費用等、先行投資も必要となり難しいと思います。その中で地域に根ざして垂直展開の経営方針に舵を切るというのがセオリーになってくると思います。定期点検やメンテナンスは必然的に顧客と会うことができますので、顧客の囲い込みによって顧客の価値を最大化させていくことが今後の舵取りとしてもアフターは必要不可欠になっていくのではないでしょうか。
臼井さん 「定期訪問」でお客様と良好な関係性を築くことで、トラブルやクレームとは無縁になっていきます。また社長である私による同行訪問は、お客様に喜ばれることもあれば身構えられることもあります。ただお客様からは「会社に大事にされている」と思っていただけるんですよね。
訪問時に伺ったお客様の声はデータベース化し、全社横断で共有することを仕組み化しています。ネガティブな声は即座に改善。ポジティブな意見は現場に貼りだし、職人さんにも共有しています。そうすると現場・職員さんの指揮も高まります。会社としてのレベルを引き上げることで、お客様との信頼関係も深めています。
石井さん リアルでの顧客接点を大事にしたいと思っていても実際にできるかは別です。SAKAIさんは実践していて素晴らしいです!お客様との関係性の強化の重要性という観点でいうと、マイナスをゼロにするというものとゼロをプラスにするというところの両面があるかなと思います。お客様からクレーム・相談レベルでくるのか、指摘レベルで来るのかでは意味合いが違います。接点量が多かったり、お客様が信頼してくれていればそこまで強い指摘は来ないと思います。マイナスをゼロにする効果は大きいですよね。
また、関係性の構築・維持向上にはオーナー様専用のファンサイトが有効だと考えています。もちろんリアルも重要で、リアルな行動とデジタルをかけ合わせていくのが良いと思います。サイトの中で企業姿勢やアフターに繋がる情報など、様々なコンテンツを配信し、日頃から見てもらえるようなファンサイトを作ることで、双方向の関係性を築くことができます。リアルで年に何回も会うのは難しくても、定期的なデジタル接点を取っていく。このようなやり方も1つあり得ると思います。
井上 臼井さんのように社長自らアフターを実施することで、社内への浸透・促進が加速するのではないでしょうか。素晴らしい取り組みですね。
弊社はアフターを代行をする会社なので、あくまでも顧客との関係性強化を手伝っている立場ですが、極論はアフターの内製化が理想だと思います。自社のブランド・価値観をアフターにまで落とし込んでいく方が一貫性があり効果性も高いと思います。一方でそこまで手が回らない工務店様はアフターができず関係性が崩壊してしまうという現状があります。当社では工務店様のアフターを代行し、そこでお客様から聞いた話を工務店にお返しすることで、アフターのリソースがない工務店でも関係性を維持するお手伝いをしています。質の高いファンづくりを行うなら、そのための取り組みを自社で行い、定期点検など基礎的な部分を外部化して余力を生み出すのもありではないかと思います。なんとしても顧客との関係性をつないでいくこと、「持続可能なアフター」が大切だと思います。
セッションを振り返って まとめ
最後にパネラーの皆さんから本セッションのまとめとして「アフター」についての想いが語られました。三浦さん 私はアフターの先は、将来的に売却支援や買取再販に繋がっていくと良いと思っています。その際に住宅性能も維持できていると日本の住宅ストックとしても良くなります。究極はずっとストックを循環させるモデルであり、これを工務店様が年間数棟でも実施できたらいいなと思っています。オーナー様宅のアフターから派生し、このモデルが実現できれば売上にも繋がりますし、お客様への新たなサービスにもなるのではないかと思います。このような将来も視野に入れてアフターの組み立てをするということが大事ではないかなと思います。
井上さん アフターを単なるコストとおまけで捉えるのではなく1つの戦略として捉えてアフターをマーケティングをしていきましょうと提言したいです。
家を建てればアフターはつきものです。なんとかやりきろうでは続きません。アフターを1つのお客様と会える良いチャンスと捉えないと、そこから顧客の囲い込み・LTVの最大化・顧客の隠れたニーズの発掘はできないと思います。しっかり関わり続けることで顧客にとっても工務店にとっても価値が産まれWin-Winの関係が構築できます。
アフターは今後の住宅着工等の減少や環境を見ていく中でも必要不可欠になってくると思いますので、一度、ご自身の会社のコアの部分とか強み的なところを整理していただき、アフターを内製化すべきか、外部化していくのかを考え、ぜひ各社様に合った持続可能なアフターの形を見つけていってください。
石井さん
住宅業界は厳しい状況と言われていますが、どの工務店様も自社の累計の着工棟数が減ることはなく増え続けていくので、オーナー様は会社の資産であるということがアフター強化の根本にあると思います。アフターを実施するにあたって収益を求められ着手が及び腰になるケースもあるでしょう。ただ紹介をいただけたら嬉しいですよね。お客様との関係性が築けていなければ口コミも紹介も生まれません。そこから一定の成果が出る仕組みが作れると、その範囲をいかに広げていけるかということになります。アフターと顧客紹介・口コミは掛け算の関係性だと思います。満足度の高い顧客を増やしていくためにサービスに磨きをかけたり、アフターにより一層注力したり、内製化・アウトソースを使い分け、結果的に紹介・リピートを増やすことが理想ですよね。
また弊社が提供しているアンバサダークラウドは、オーナー様との関係性の構築・維持向上を可視化・サポートするデジタルツールです。ぜひこのようなツールも上手く活用いただき、アフターと紹介を上手く両立していってください。
臼井さん 私はお引渡し後もお客様と継続して関わり続けて関わり続けることで、リフォーム案件・紹介・口コミに繋がると思っています。SAKAIの目指す未来は、「ファンダム化」です。ファンダムとは、いわゆる「推し活」のことです。SAKAIに関わったお客様が、弊社のことをお勧めしたり推し活してくれるようになれば、集客にお金をかける必要がなくなります。その分の費用を、今まで弊社で建築していただいたお客様に使うことができることが理想です。アフターは継続して重ねていくしかないので、それを続けていき、最終的に口コミと紹介でファンダムを作れるようになりたいと思っています。
また、弊社を選んでくださったお客様に関心があるので、アフターを通じ、なぜ弊社を選んでくれたのか、その答え合わせをしたいんです。皆さん、引き渡し時・工事のアンケートには本音を書いてくれないと思うのです。どうして選んでくれたのか、お客様の本音を知りたいんですよね。20年経って教えてくれたら、それは価値があると思うんです。お客様に関心を持ってアフターをやっている会社は本質的に強いと思っています。これからもアフターを継続して実施し「だからうちはアフターをやっているんだ」と自信を持って言えるようにしていきたいと思います。
レモネードの原則というのがありまして、今はちょっと酸っぱい市場だし、酸っぱい環境のような気がするんです。それを酸っぱいと言ってもしょうがないので、どうやったら甘いレモネードにできるかを考える時期かなと思っていて、酸っぱい状況をレモネードにする一つの切り口がアフターを徹底するってこともそうだし、臼井さんが仰っていたような、お客様の本音を知るってことかもしれません。酸っぱいままで終わらせず、甘いレモネードを作るんだっていうことを、ぜひ今日のセッションでアフターを切り口に皆さん感じていただいて、勇気を持っていただければなと思います。
色々な企業の不祥事が相次ぐ昨今、お客様が「透明性」を求めており、今まであまり見えにくかった「アフター」というブラックボックスへの関心が高まっている。住宅着工棟数が減少する中、顧客の囲い込み・顧客との関係性強化は重要な課題である。
今回、トークセッションを通じてアイジーコンサルティングで提唱している「アフターマーケティング」の考え方を全国のビルダー様へ届けることができた。
アフターから収益を上げることはできるのか。顧客紹介・リピートにつながるのか。アフターを内製化すべきか、アウトソースすべきか。このトークセッションがアフターに課題を感じているビルダー様の課題解決の一助になっていれば幸いである。
今後も「アフターマーケティング」の価値観を広めていきたい。