170種類から選ぶ!シロアリ防除薬剤の選定基準とは?~自分たちが 納得できるものを提供するために~

DATE : 2024.09.02
目次
アイジーコンサルティングは、住まいの「経年進化」の実現に向けた事業活動を行っており、特に祖業のシロアリ防除工事には歴史やこだわりが詰まっています。シロアリ防除工事では、使用する薬剤の選定基準やプロセスも工事の品質に直結します。また建物の構造、外来種を含むシロアリをめぐる環境、シロアリ防除用薬剤の研究・開発も変化し続けています。実は、(公社)日本しろあり対策協会の認定薬剤は170種類もあり、その中から最適なものを選ぶのは簡単ではありません。そのため弊社では、自社の研究開発部門R&Dプロジェクト(Research and Development)にて独自の選定基準に基づく評価、検討を行っております。その結果、今回、使用薬剤の一部を変更することになりました。 シロアリ防除薬剤は、何を基準に選定されているのか。安全性?持続力?におい?この記事では、薬剤選定の裏側や担当者の想いをインタビュー形式でお届けします。ぜひご覧ください。
この記事のPOINT
  • 薬剤選定は常に最適な薬剤を追求するため年に1回実施
  • 薬剤選定にかける想い「自分達も納得できるものを提案し提供したい」
  • お客様に安心・安全を提供するためには妥協無し!
この記事に登場する人
相川 祐也
メンテナンス事業部 横浜支店 アフターサービス課  主任
2007年入社。神奈川エリアを中心とした関東地方の施工を担う。神奈川エリアのアフターサービス課チームを導く頼れるリーダー。

薬剤選定を行う R&Dプロジェクトとは?

取材班 R&Dプロジェクトについて教えてください。

相川さん 私自身の参画は、前進の商品選定プロジェクトが始動した際に手を挙げたのが始まりです。そこから、2022年に研究開発を加速し弊社にしかできない新たなサービスの構築と創造をしていこうということで「R&Dプロジェクト」に改めて現在に至っています。会社として長年にわたって取り組んできた薬剤選定に加え、シロアリの飼育研究、ウェアラブルカメラ、ドローン、現在扱っている商材全般の選定など、取り組みはますます広がっています。探求型のマニアックなメンバーが集まっているので結構面白い組織ですよ。

R&Dプロジェクトについては下記の記事でもご紹介しています
1899年創業のパイオニアであるために ~時代のニーズ合った知識と経験を活かした住宅メンテナンス~
R&Dプロジェクトが世界を変える!|アイジーグループアワード特集

薬剤選定はどのようの行っているの?

170種類もある薬剤から最適なものを導き出す。シロアリ防除方法の薬剤選定に迫る!

取材班 シロアリ防除薬剤の選定基準・方法について教えてください。

相川さん 薬剤選定は常に最適な薬剤を追求することを目的に、年1回のペースで行っています。
 弊社では、安全性・環境への配慮・防蟻効果・施工性といった観点に基づいて独自の評価基準を設定しています。それをベースに、まず安全データシートなどを参考に数値を調べていきます。やはり、実験できることとできないことはあるので、信憑性のあるデータを参考にし、不足している情報は薬剤メーカーに直接確認するなどしています。また実は、臭気の項目については、好みは個人差がありますが強さは数値化することができます。感覚ではなくきちんと数値化して判断するため、外部の検査機関に委託してテストをするなどもしています。それらの結果をもとに、最終的に総合ランクで点数付けをして評価をしています。もちろん、実際に使用してわかることもあるため、事前に施工テストなども行っています。

取材班 年1回、自社で定めた評価基準に従って毎年見直しをかけているのですね。

相川さん はい。選定項目自体も、内容や評価の比重のブラッシュアップを重ねています。
 その時の薬剤開発の状況や検討が必要な事項に応じて変更を加える形で、項目に追加するものもあれば、比重を軽くしたり項目から外すものもあります。例えば、過去に薬剤の防蟻効果にばらつきがあった時代は、確実な防蟻効果を発揮するため有機塩素系、有機リン系※などを使っていた時代もありました。(※現在はシックハウス症候群への懸念から使用が禁止されています。)少し前までの基準だと「剤形」の項目で、安全性と伝搬性に有効なカプセル剤の評価が高かったのですが、現在はカプセルでなくても問題無いという時代に変わっており比重を下げました。反対に、「臭気」「反復暴露(長期的な薬剤の安全性)」の優先順位を高めました。最近はにおいに敏感な方もいらっしゃったり、長期的な薬剤についての評価をより強化していこうという背景です。

取材班 時代と共に薬剤も進化していくので、それに合わせて選定基準も見直しているのですね!

相川さん  また、弊社では施工環境に合った薬剤を用いるため新築物件と既存物件で使用薬剤を変えており、評点の比重も異なります。
 新築時に関しては、施工性を重視しています。現場での作業中に雨が降ったりする場合、急遽施工方法が変更になる場合などがあるため、吸着率の良さなどもポイント。既存住宅では、お住まいの方がいらっしゃる中での施工を踏まえて、摂取許容量や魚毒性、臭気などの比重を高めています。また、お客様のご意見なども考慮して基準を検討しています。
いずれにしても、曖昧にせず明確に納得できる数値化をした上で判断すること、にこだわっています。そのためには、メーカーさんや検査機関などとの協力体制も欠かせません。協働での実験、必要な検査の依頼をできる関係性も構築しています。メーカーさんからも、弊社の現場の声や選定を通じた評価は研究開発にとって有意義、と言って頂いているんですよ。

タブレットで資料を見せながら取材班に説明してくれました

今回の薬剤改定の経緯

取材班 今回、年1回の薬剤選定の結果、シロアリ防除薬剤を一部変更することになったと伺いました。変更に至る経緯を教えてください。

相川さん 今回、 前述の方法で、薬剤選定を行いました。今回変更した薬剤のポイントは、①薬剤の剤形が「フロアブル剤」になること、②従来よりにおいの強さが抑えられること、③有効成分がネオニコチノイドの薬剤を取り扱わなくなること、の3点です。
フロアブル剤とは、溶剤に溶けにくい有効成分を細かい微粒子にして水に混ぜたものです。従来のマイクロカプセル剤と異なり、外面をカプセルでコーティングしていません。マイクロカプセル剤は安全性と伝播性の高さを保つ点で有効な剤形です。しかし、薬剤の研究開発が進み、薬剤の原体の安全性をより一層高めつつ、伝播性といった防蟻効果もしっかりある薬剤が出る時代となってきています。有効成分や効果を発揮するアプローチ方法なども多岐にわたるようになりました。そのため、カプセルがなくても、安全性と防蟻効果が発揮できる薬剤であるとして変更を判断しました。 

薬剤の剤形「フロアブル剤」イメージ
今回新たに選定・更新した薬剤

相川さん においについては、薬剤のにおいを軽減するため特定の防カビ成分を含まない薬剤を選定しました。臭気テストでは、パネラーの方ににおいを嗅いで点数付けしていただいた結果、従来用いていた薬剤と比較して数値が低い結果となりました。
 今回選定した薬剤に関しては、後発で同じ薬剤ににおいが強い防カビ成分を含んだものが出たため、製造が止まっており(公社)日本しろあり対策協会の認定も取得していませんでした。ただ、弊社としては、その防カビ成分が無くても性能に問題はなく、匂いが懸念されるから使いたくない、という意向をメーカーさんにお伝えし、製造の再開と認定取得をしていただいたという経緯があります。それほど、薬剤選定にはこだわっています。
 有効成分にネオニコチノイドを用いた薬剤については、総合的に判断をした結果、選定から外れた形です。しかし、ミツバチへの影響を懸念する声が世界的に高まっていることもあるため、代替となる薬剤の検討は進めていました。もちろん、最も求めるのはやはり安全性なので、お客様にとっても安全性が高いものをしっかりと選んでいることがより理解いただけるようになると思います。

薬剤選定についての声

取材班 相川さんは普段、お客様宅でシロアリ防除施工を行っていると思いますが、お客様から薬剤について質問を受けることはありますか?

相川さん はい、あります。薬剤は専門性が特に高い分野ということもあり、安全性や効果、この現場ではどうなのかといったご質問が多いです。
 安全性については、今市場に出ているものは基本的には安全性の高いものがほとんどだと思いますが、その中でもより安全性の高いものを使うようにしていますね。ただ、いくら自信を持って安全と伝えられる薬剤を選んでいても、目に見えるものではないのでわかりにくいために、敏感になりがちだと思います。そのため、摂取量の基準であるLD50(半数致死量)などを参考に「醤油や塩と並ぶほど安全なんですよ」と伝えることが多いと思います。また、アレルギーや化学物質過敏症などは人によって反応するものが違うため難しいですが、体で感じる安全性の要素にはにおいも含まれると思うため、少しでも低減できるようこだわって選定しています。

薬剤選定を行うR&Dプロジェクトの様子
プロジェクトで発言する相川さん

取材班 薬剤ときくと、身体に害はないか、安全性は気になる部分ですもんね。他にも聞かれることはありますか?

相川さん 効果の長い薬剤はないか、と聞かれることもありますが、今の安全性の高い有効成分を用いた薬剤では、おそらくないと思います。メーカー保証で期間を伸ばしているケースもあるようですが、それは薬剤の保証ではないですよね。昔の薬剤効果が強かった時代は永年保証ができるというものもあったようですが、薬剤の安全性への考慮が進んだ今は5年間が基本です。
 また、薬剤選定で想定した性能や効果を最大限発揮するためには、「使い方」も非常に重要です。例えば、最近は建築工法や住まい方も様々になっています。空気循環工法など配慮が必要な工法であれば、物件に応じて施工方法を変えます。住まい方で言うと、家庭菜園をされているケースなどで、施工を行う前に考慮が必要か検討するためお客様にヒアリングを行い、臨機応変な対応をするように努めています。薬剤がいくら安全でも、施工する際はさらにお客様に配慮した施工方法を採用する、というところが大事です。ちゃんとした対応をすることでより安心してもらえるようにしています。
 中には、薬剤についてお話する機会があると、そこまで考えて選定しているんだね、といったお声をいただくことがあります。しっかりと選定したという根拠があるから絶対に自信を持って言えているのも大きいのかもしれません。

取材班 しっかりと薬剤選定したという根拠があるからこそ、自信をもってサービスを提供できているのですね!私もここまでこだわって薬剤選定をしているとは知りませんでした!これなら安心ですね!

薬剤選定担当者としての想い

取材班 最後に、薬剤選定にかける想い、こだわりについて教えてください。

活き活きとした表情で想いを語る相川さん

相川さん 一番は、自分達も納得できるものを提案し提供したい、と思っています。とにかく妥協しないというところですね。
 だからこそ、実際に調べてみないとわからないので、有効成分は使い勝手が良いのか、攪拌して沈殿しないか、など様々なことを実験しています。もちろんメーカーさんに任せきりにするのではなく、自分たちでしっかりと確認した上で選定をすることが大事です。場合によっては、製造が止まったものでも、自社の選定基準とお客様のご意見がマッチしていれば、そちらを使えるように働きかけたりもします。もし妥協していたら、市販に出回っているこの薬が良さそうだから採用しようよって言ってると思うんです。大変ですが、会社として関わる工務店様やお客様のもとに届くことを思えば、それくらい力を掛けるべきだと思っています。
 まずは自分が、「きちんとこういう理由や数字があるから安全なんですよ」、と自信をもって伝えられるようにしていますし、社内での理解も深まるように努めています。ちゃんとやっている根拠があるから自信を持って言えるというのは、確実にありますよね。なので、これからも自信を持って提案、提供していけるよう、薬剤選定の取り組み、そこで検討した性能や効果を最大限発揮できるような取り組みは、しっかりと継続していきます。

この記事のまとめ

今回は、薬剤の選定方法や改定内容、取組みへの想いについてインタビューを行いました。弊社は、今年で創業125年を迎えるシロアリ業界のパイオニアです。お客様・工務店様がこだわって建てられた住宅をシロアリ被害から守り、経年進化していけるよう努めることが責務だと捉えています。今後も経験や知見を積み重ね、最適な薬剤選定と施工を実現できるよう尽力してまいります。



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